アントフィナンシャルが2016年9月に7000万USDで買収したEyeVerifyというアメリカ企業があった。その企業が「ZOLOZ」という社名に変更し11/3に「眼紋認証」技術を公表した。加速する顔認証をサポートする形で認証の精度を高めていく予感がする。
特別なハードを必要としない低コストな新生体認証テクノロジー 眼球のしわ認証とでもいうべきか「眼紋認証」とは?
瞳孔周りの黒目部分の虹彩(こうさい)を認識する虹彩認識という技術はよく耳にする。しかし、今回「ZOLOZ」が発表した「眼紋認証」という言葉は聞きなれない技術である。
眼紋認証とは、どうやら「眼球のしわ認証」のイメージで、白目の部分に流れる毛細血管の特徴など、眼球の表面的な特徴を識別する手法のようである。虹彩と同様に眼球にはユニークな個人の特徴があわられるため、個人を識別する材料として最適なのだと言う。
ご存知のように虹彩認証の識別率は極めて優秀である。しかし一般的な普及が進まないのは、それを行うには遠赤外線カメラなどの専用のハードウェアが必要となり、またユーザーの高い協力姿勢が必要となるためである。技術は優秀だが、一般導入へのハードルが高い。
しかし、今回「ZOLOZ」が発表した眼紋認証は、ごく普通のスマホのカメラで十分に導入し認証でき、特別なハードを準備する必要がない。しかも、ユーザーの特別な協力も必要なくごく普通の写真撮影のような感覚で手軽に完結する。
認識精度としても、既に極めて酷似している一卵性双生児の識別にも難なく対応できる実験結果を示している。
一卵性双生児の眼紋認証識別実験
「ZOLOZ」の上級アルゴリズム研究者である李亮は、眼紋認証を活用することによってユーザの負担を増加させることなく、認識技術の精度と安全性を高めることができると自信を示している。
おそらく、アントフィナンシャルが現在力を入れている顔認証技術をサポートする形で、近い将来この技術がサブ的に導入することが計画されているのかもしれない。
実は、顔認証だけではユーザーが整形手術を行ったり、突如として太ってしまった場合などは、誤認識が発生する。また、成長期の子供などは、数ヶ月で顔が逞しくわかってしまうことも多々あり、登録する顔画像を随時アップデートしないと誤認識が発生する原因となっている。
目紋は虹彩と同じように一生変わることがないため、顔認証で発生する上述のような問題点を解決できると期待されている。顔認証をサポートする生体認証の手段として最適な認証手段となる可能性を秘めている。
眼紋の場所
また、李亮は中国に存在する子供の誘拐事件の解決策としても言及している。
中国は、未だに子供の誘拐事件が数多く見受けられる。しかし、小さな子供でも「眼紋認証」でデータを記録しておけば、連れ去られた子供の特定、発見に有益であると言う。子供の成長につれ顔が変化したとしても、この「眼紋認証」技術があれば、時間が経過を超越して個人の認証を手助けできると言う。
アントフィナンシャルは、既に金融機関での活用を視野に入れているようだ。顔認証と眼紋認証が相互に助け合いながら生体認証の認証率を高めていく時代が来るかもしれない。