中国版全銀ネットシステムのスタート!?4月1日ユニオンペイ(銀嶺)=とWechatPayがQRコード業務提携を発表!

自由に活動できていた中国第三者決済アリペイ、We ChatPayに「中国版全銀ネット」とも言える政府規制が入る。第一弾として銀嶺(インレイ)とWeChatayが業務提携。今度アリペイの追随も必須であろう。複雑怪奇な新規制を確認しておきたい。

 

中国人民銀行がQRコード決済に対する規制導入へ

4月1日、WeChatPayとユニオンペイがQRコード決済において業務提携を発表した。ご存知のように現在中国ではアリペイやWeChatPayといったデビット決済を基盤とする決済が人々の人気を集めており、クレジットカードをベースとするユニオンペイは影が薄い存在となっている。このタイミングで今さらWeChatPayがユニオンペイ(銀嶺=ギンレイ)と業務提携を発表したのであろうか?

実は、これには2017年に中国人民銀行が発表したバーコード規制(中国ではQRコード決済も含めてバーコードと呼ぶ)が深く関係している。中国の決済規制に関しては、当サイトでも2017年9月21日付の記事において取り上げ「中国版全銀ネット」の導入であるとして規制導入後のWeChatPayやアリペイのビジネス動向に最大の注意を払う必要があると伝えた。

参考記事:

人民銀行(中央銀行)が「網聯=ワンリェン」という中国版「全銀ネット」の導入を発表した。2018年6月30日から運用開始だ。アリペイやWeChatPayへの影響はいかに?

さて、昨年中国人民銀行が発表したバーコード規制によれば、アリペイなどの決済事業者が直接銀行と交渉し銀行システムと直結することを禁じている。従来、アリペイは銀行と直接交渉することより有利な条件を引き出すことで競争力を持ち、決済戦争を優位に展開してきたわけである。規制後の世界では、中国人民銀行が指定する決済システム、あるいは法定認可された決済ネットシステムを経由して銀行にアクセスせざるを得ないこととなる。

いわゆる日本でいうところの「全銀ネットシステム」のようなものが中国でも導入されると考えて頂ければ理解が進むであろう。

そして、現段階では中国人民銀行が認める“認可された決済システム”は、中国人民銀行が提供する銀行間の決済システム(網聯=ワンリェン)を活用するかユニオンペイ(銀嶺=ギンレイ)の2つしか選択肢がないのである。いずれにせよ、日本の全銀ネットのようなワンクッションの仕組みを中国でも導入するということを意味している。


1、アリペイやWeChatpayが自由に活動できた決済システム(GloTechTrends作成)


2、網聯=ワンリェンあるいは銀嶺=ギンレイを活用した決済システム(GloTechTrends作成)

 

今後の影響を考える(1) 決済の摩擦(手数料)は高まるのか?

現段階では、中国人民銀行が規制する本当の意図は見えにくい。しかし、網聯=ワンリェンや銀嶺=ギンレイといった担保されたネットワークが介在すれは、トランザクションの安全性や信頼性が高まるのは当然である。QRコード決済は、セキュリティーの面ではNFC決済などに劣るため、政府が消費者保護の観点から今回の規制に踏み切ったというポジティブな指摘は間違いでは無いだろう。

しかし、その一方で、アリペイやWeChatPayが有利なレートを直接銀行から引き出し競争力を維持していた戦略は今後活用することが困難となる。

現在中国では、マーケットシェアをめぐる決済競争が現在進行形で繰り広げられている最中である。直ちにユーザーの手数料にリフィティングチャージが上乗せされることは想定しにくいが、将来的に摩擦係数の低かったアリペイなどのQRコード決済の魅力が削ぎ落とされる可能性も無くは無い。将来的には運営コストがユーザー負担となる可能性は否定できない。長期に渡り経過を見守る必要がありそうである。

余談であるが、網聯(ワンリェン)を運営する網聯清算有限公司の株主構成をみると、上位3位までの株主が中国政府系機関であるが、アリペイとテンセントも同率9.61%出資し第4、5位の株主、京東(JingDong)も4.71%で6位の大株主を構成している。アリペイやWeChatPayがほぼ独占していたQRコード決済の果実を政府系を上位3位までの大株主に迎えることによって、今度も安定してQRコード決済を運営していこうという腹づもりなのかもしれない。

wangling stock holder網聯清算有限公司の株主構成(知道公表データよりGlotechTrendsが加工)

 

今後の影響を考える(2)  ビッグデータの行き先は?

さて、もう一つ気になるのはビッグデータの行方である。アリペイやテンセントのビジネスモデルを考える上で最も大切な要素である。

今回の新規制をよく確認してみると、どうやらWeChatPayやアリペイを活用した全ての決済情報が「網聯」(ワンリェン)や銀嶺(ギンレイ)に流れるかというとそうでは無いようだ。あくまで銀行が介在した場合の決済に限定して決済情報が「網聯」(ワンリェン)や銀嶺(ギンレイ)のネットワークを介在して精算されることになるのである。

つまり、アリペイユーザーが余額宝(アントフィナンシャルが提供する流動性商品)にある残高や、花唄(同じくバーチャルクレジット商品)などを活用した場合は、アリババエコシステム内の資金移動だけの話であり、「網聯」(ワンリェン)や銀嶺(ギンレイ)のネットワークとは無関係の決済となる。銀行口座を通過しないようなアリババエコシステム内での資金移動による決済ならば、今回の新規制を回避できるということになる。

従って今回の新規性が導入されたとしても「網聯」(ワンリェン)や銀嶺(ギンレイ)が取得できるビッグデータ量は、全部のQRコード決済のうち銀行間を通過するものに限定されるということになる。

今回のQRコードに対する新規制はまだまだ導入されたばかりであり、今後の動向をもうしばらく注意する必要があるだろう。GloTechTrends(グローバルテクノロジートレンド)としても、今後も有益な情報を皆様にお届けしたい。