アリババのスマート授乳室。天猫自動販売機でユニチャームのオムツをタダ同然で1枚ごとの販売!

中国のショッピングモールを歩くと新しい発見が見つかる。今回はユニチャームのオムツ販売機とスマート授乳室の話題である。1分で販売されるオムツはデータ社会とプライバシーの問題を考える上で大変興味深いケーススタディである。

アリババが運営する銀泰城(INTIME CITY)モールでスマート授乳室スタート

つい先日、杭州の世界遺産である西湖周辺の銀泰城(INTIME CITY)モールでスタートしたスマートトイレの速報をお伝えしたばかりである。

杭州に世界初「スマートトイレ」誕生!?悪名高き中国トイレが、アリババの「ニューリテール戦略」と融合!?

今度は、中心部より7キロほど離れた別の銀泰城(INTIME CITY)モールで、スマート授乳室が開始された。中に入ると赤ちゃんにあげる粉ミルクを溶かす適温のお湯が用意されたり、ウェットティッシュ、手をかざすと自動であくゴミ箱、オムツ交換台などが配置してある。一昔前の中国では考えられないほど気の利いた授乳室となっている。

 

しかし、おそらくこれをスマートと表現しても日本人には何の驚きもないであろう。日本では、何十年も前から多くのデパートや百貨店で備わっている当たり前の仕組みとも言えるからである。

実はこのスマート授乳室のポイントは別のところにある。

ユニチャームの人気オムツMoonyを天猫自動販売機により1「分」で販売! ただしアリペイでの決済が義務付け!

1分と記載したが時間の話でない。中国に長く在留している人でも1分をお金の単位だとすぐに認識できる人は少ない。1元は17円強、その1/10が角、さらにその1/10が「分」なのである。つまり1分は日本円で換算すれば0.17円ということになる。

スマート授乳室の正面には、アリババが展開する天猫の大型オムツ自動販売機がおかれ、その中にわずか1分でユニーチャームの「Moony」が1枚ずつ販売されているのである。

スマート授乳室を使用するユーザーは、同時に赤ん坊のオムツを交換することが多い。スマート授乳室目前に配置された天猫オムツ自動販売機は期待通り大ヒットし、売り切れのボタンが続出の人気アイテムとなっている。

どうせ0.17円という値段ならタダで配布すれば良いではないかと思うかもしれない。しかし、タダで配布したらお客さんのデータを取得することができない。そこで0.17円という破格の価格設定にして、アリペイ決済を義務付けることによって、オムツを必要とするお客さんのデータを取得してしまおうというのが本当の狙いなのであろう。

タダより高いものはない、個人データと1枚のオムツを交換

さて、ユーザーはたった1枚のオムツを0.17円で受け取る代わりに、自分はオムツが必要な赤ん坊を抱える家族の一員であるというデータを提出することになる。

おそらく、多くの中国人はそんなことは考えていない。日本製のオムツが格安で手に入り便利だとい動機で人気があるのだと思われる。

赤ん坊がいる特殊家族(親)のデータというのは考えてみればビジネスでは大変価値があるように思える。子供が赤ん坊の時には、ミルク、オムツ、子供用品など幅広い商品の潜在顧客となり、やがて子供が成長するにつれて、子供服、教育、スポーツ、記念写真など様々なプロダクトを成人するまでの長期間に渡り販売促進可能となる優良な見込み客データとなるのである。

スマートトイレで化粧品が格安で販売されるのも同じ理由

先日記載した、スマートトイレの記事においても女性用のコスメなどがタダ同然の価格で自動販売機により販売されているお話をお伝えしたばかりである。これもロジックとしては同様のものであり、アリペイ決済を義務付けることでコスメを必要とする女性層のデータを効率よく取得できるというものである。

しかし、購入する人の姿を見ていると、誰もプライバシーのことなど気にせず、当然のように購入しているように見える。

データ社会が本格的に到来する中国で、今後も同様な仕組みが増えて行くだろう。中国では、個人データの提供と代わりに、快適で便利な生活を得ることが当たり前のバーター取引となっているのかもしれない。

ある中国人に聞いてみると、「どうせアリババはとっくの昔に私たちの家族に子供がいることを把握しているから今更問題ないでしょう」と答えた。納得する部分もあるが何かスッキリしない。

Glotechtrends(グローバルテクノロジートレンド)としては、今後は中国人のプライバシー意識に関してより深く考察して行くつもりである。