世界中の配車アプリ企業へ投資を加速するソフトバンク 孫正義の狙いとは?

ソフトバンクが配車アプリ企業への投資を加速している。Google、アリババがパートナーを選別して投資しているのに対し、ソフトバンクは有名配車アプリ大手企業全てに投資を実行している。孫正義には、どんな未来が見えているのだろうか?

 

ソフトバンクが出資する配車アプリ企業一覧

まずは、ソフトバンクが出資する配車アプリ企業一覧をご覧いただきたい。

softbank investment in sharerideソフトバンクグループが投資する配車アプリ企業(GlotechTrends作成)

2018年1月にソフトバンクは、Uberの経営陣スキャンダルの隙をみて有利に交渉を進めUber株の15%から20%程度を直近ファイナンス価格より3割程度ディスカウントして取得することに成功した。Uberへの出資を終えたことによって、世界の主要な配車アプリ企業ほぼ全てに対する投資が完了したこととなった。

2017年は、ソフトバンクの配車アプリ企業に対する投資が大きく拡大した一年であった。まず、2017年5月中国の配車アプリ最大手の滴滴出行(DidiChuxing)に対して50億USDの巨額出資を実行し影響力を強め、その2ヶ月後の7月、投資した滴滴出行(DidiChuxing)とともにシンガポールを中心に東南アジアで攻勢を強める配車アプリ企業であるGrabに20億ドルの追加出資を実行している。

インド最大手配車アプリであるOLAに対しては、2017年10月に3度目となる20億ドルの出資を行い合計出資額は25億ドルを超えるものとなっている。

ソフトバンクが投資している配車アプリ企業は、Uber、滴滴出行(DidiChuxing)、Grab, OLAなどの超大手ばかり。言葉は悪いがまさに手当たり次第、世界中で誰もが知っているような配車アプリ企業にほぼ全て投資している状況なのである。

 

東南アジアで勢力を拡大するGrabとは?シンガポール企業

ここで、少し東南アジアで存在感を拡大するGrabという企業を紹介したい。

シンガポールに本社を構え、東南アジアで圧倒的な存在感を示す配車アプリ企業である。2012年マレーシアで「MyTeksi」(マレー語でTaxiをTeksi)として創業されその後シンガポールへ本社を移した。GrabTaxiという社名を経て現在は「Grab」というのが正式名である。タクシーだけの配車サービスから多くのライドシェアサービスへ拡大する中で社名からTaxiを外し現在のGrabとなったのである。

Grab 使用画面

現在は、東南アジアの7カ国の112都市で利用可能であり6000万以上のデバイスにアプリがダウンロードされている。タクシーを活用した配車アプリでは95%、プライベートカーの分野では75%のシェアを誇っている。

この企業にもソフトバンクは創業当時から現在に至るまで合計3回の出資を行なっており出資額は合計で30億ドルを超えている。

東南アジアでは「Uber」「Grab」の2社が激しいシェア争いを繰り広げている。双方は、街のいたるところに巨大なリアル広告を掲載し、モールなどでプロモーションを頻繁に行いユーザーの獲得に躍起である。一方で、ドライバーを自陣に取り込むよう助成金を交付しているのだが、双方が助成金交付競争のような状況を作り出しまさに悲哀に満ちた体力勝負の消耗戦となっている。

当然、東南アジアではGrabもUberも利益が出る状態とはかけ離れたものとなっている。Uberは利益が出ている他の地域から補填しているという話があるが、Grabは東南アジアが主戦場のため補填してくれる先もなく、自らが資金調達を実行し資金繰りに目処をつけるしかない。2018年1月にもGラウンドとなるファイナンスを実行し、韓国の現代自動車を新しく株主に迎えている。慢性的に資金が必要な状況であることに変わりはない。

実は、滴滴出行(DidiChuxing)は、当初は独自に東南アジアへ進出していく計画を有していたが、中国ブランドで東南アジアに進出しコストの消耗戦を複雑化するよりも、東南アジアで既に認知度があるGrabに投資し後方支援に回る戦略を選択したのである。

 

 ソフトバンクの孫正義の狙いは、どこにあるのか?

ソフトバンクの配車アプリに対する投資は、リストを見れば一目瞭然で常識破りだとわかるだろう。通常は、戦略的な投資と位置付けるならばDidiに投資したのならば、そのライバルであるUberに投資することはあり得ない。北米No2の配車アプリであるLyft社の株式を保有(買収したFortless Investmentを通じて)している状態で、北米No2であるUberへの投資に応じることも理解し難いものではある。言葉は悪いが、まさに手当たり次第に手を出しているようにしか見えない。

これほどまでに、あらゆる配車アプリに投資を実行する孫正義氏の狙いはどこにあるのであろうか?先見の明でアリババに対する投資を大成功という結果に導いた孫正義氏には当然考えがあるのだろう。

推察するに、ソフトバンクが最もフォーカスしている部分は、乗客であるユーザーだという点であろう。だから、競合する企業に対しても同時に並行して投資を行うことが可能なのであろう。シェア自転車ビジネスのように、配車アプリを使用するユーザーが生み出す「人々の移動に関するビッグデータ」が将来的には巨大な付加価値を生み出し、新しいビジネスを作り出していくということなのだろうか。

おそらく、そう遠くない未来に自動運転が導入され配車アプリのもう一方のユーザーであるドライバー側は消滅する時代がやってくるだろう。自動運転時代の到来を合わせて、孫正義氏にはどんな未来が見えているのか大変興味深い。

GlotechTrends(グローバルテクノロジートレンド)としては、今後もソフトバンクグループの投資動向に注視していきたい。