シェアリングエコノミーの最新事例、シェアアンブレラ(シェア雨傘)でどうやって収益化?共享e傘|中国

シェアアンブレラ(シェア雨傘)というサービスを耳にしたことがあるだろうか?シェア自転車の雨傘版といえば、分かりやすいだろう。中国の共享e傘というスタートアップ企業が、どこで傘をレンタルしてどこに返しても良いという自由度の高いシェアリングエコノミー事業に乗り出している。

2017年6月と7月の二ヶ月の間で、中国主要15の 都市で、 スタートアップ企業である共享e傘が運営するシェアアンブレラのサービスが始まった。中国全土で年内にも1000万本の傘を配置する予定だというから驚異的なスピードである。

 

  • シェアリングエコノミーで傘がメディアへと変貌を遂げる?

シェアアンブレラ 共享e傘

2017年6月末の時点で、既に中国の15都市で30万本の傘が配置されていると言う。登録済みのユーザーは40万人にも及んでいる。収益モデルは傘のシェアビジネスからの収益と、広告収入に大別される。

(傘そのもののコスト/収益)特殊な鍵を備えた傘のため通常の傘よりも原価は高く、1本あたり60元(日本円で約1000円)のコスト。ユーザーは、会員登録する際に、デポジット29元支払い、9元をプリベイド口座に入金する必要がある。合計で38元(日本円で630円程度)を会員登録時に支払う。1時間の使用料金は0.5元(日本円で8円強)返却と同時に決済されるという収益モデルである。

(広告収入)傘の使用料金の他に、傘には6箇所の広告スペースが設置されている。1本の傘の1箇所の広告スペースが5元/月。6箇所で30元の収益となる。近い将来、共享e傘の傘が動く広告メディアになり、大きな収益をもたらすというが彼の狙いである。

既に、自動配車サービスの最大手滴滴出行(Didi Chuxing)とも提携し、広告を獲得すると同時にその車内に傘を配置してもらう大型契約を得た。また共享e傘が提供するスマホアプリにも広告が掲載され収益とする。

街中に傘を配置するだけでなく、大企業と提携し、人の流れが確保できる優良な傘の配置場所を確保する動きにも力を入れている。中国携帯電話会社の最大手華為(ファーウェイ)の工場でも、工場内を巡回する700台ある社員の移動用バスに、この傘が配置されるという。また、wechatを運営するテンセントの本社内にも配置されることが決定するなど、拡大の勢いは止まらない。

 

  • 滞在中の杭州で、共享e傘のシェアアンブレラ事業を観察してみる。

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2017年7月半ばの時点で、既に6万にも及ぶ傘が杭州のいたるところに配置されていた。7月20日には新たに6万の傘を追加投入し、傘の流通量を増やすと言う。最終的には、共享e傘は人口700万人の杭州で、人口の10%となる70万に及ぶ傘を配置する考えがあると言うから驚異的な数だ。

実は、シェアアンブレラという事業は中国では目新しいものではない。

既に、多くの企業がこの分野で競争しているが、そのビジネスモデルの多くが固定場所から傘を貸し出すタイプの事業である。ユーザーに確実に傘を返却させ、かつ街の景観を美しく維持するためには、このビジネスモデルしかあり得ないと考えられていた。しかし、共享e傘は、どこで貸し出しても、どこで返却しても良いという自由なビジネスモデルに挑戦している点で興味ふかい。杭州の街でも、駅の近くなどの共享e傘の傘が見受けられる。

当初、共享e傘が傘を配置したところ、行政が街の景観を害するとして全ての傘を撤去処分を行い没取してしまったという。当然と言えば当然だろう。

しかし、共享e傘は没収後に行政と話し合いを持ち、このビジネスが街の発展にいかに有益かを訴え、行政を説得するのに成功した。そして、杭州の西湖(自然溢れる観光地として有名な場所)以外の場所は、このビジネスを継続してよい承諾を得て、没取された傘も全て返却されたという。現在は、行政側もこのビジネスの展開を好意的に見守っているという。

 

  • どうやってシェアアンブレラの返却率を担保するのか?盗難はないのか?

どこに返却しても良いと言うことは、ユーザーは返却手続きをしないで、傘を好きな場所に返却後に放置できるということである。傘を閉じた段階で課金終了する設計は理解できるが、その後は、多くのユーザーが、次の雨の日が来るまで、その傘を自宅で放置することとなる。どう考えても極めて非効率のように思える。

しかし、共享e傘は、それを全く気にしていないどころがむしろ歓迎している余裕すらある。共享e傘のCEOは「自宅にキープし、わざと壊さずいつかまた雨が降った時に、その傘を使って街に繰り出し、どこかのショッピングセンターなどに放置してくれればそれで良い」と明言している。それで十分に採算があうと試算しているようだ。

共享e傘の傘には、特殊な鍵がかけられており、ユーザーははじめ傘に記載されている特定番号をアプリで送信する。すると、 開錠コードが送られてきてそれを入力して初めて傘が開くというわけだ。だから、「自宅に保存しておいても使えない無用の長物。やがて街に戻ってくる」と言うのだ。

さらに、共享e傘はいう、「中国には13億人の人口がいるので、その5%の6500万人を対象とするだけでも、十分ビジネスモデルが成立する。」と。

シェア自転車の分野も、爆発的に普及し、今では自宅にわざわざ自転車を所有しているのは、自分の子供のサイズにあったカゴが必要な小さい子供を連れた主婦層がメインんとなったことを考えると、このシェアアンブレラ事業も一気普及していく可能性を十分に秘めているように思う。傘を個人が保有しない時代がやってくるのかもしれない。

ちなみに、共享e傘は、まだ外部株主を一切招いていない企業である。今までに投じた資金1000万元は、全て社長の自己資金でまかなっているという。今後、どういった企業と提携しビジネスを加速していくのか、これからの共享e傘の展開が大いに面白くなりそうだ。