【総合フィンテック企業とは】第6回 アントフィナンシャルに潜むリスク要因とは?

証券関係者によればアントフィナンシャルは2018年下半期にも香港市場/中国A株両市場で上場を実現する可能性があるという。推定時価総額は1500億USDドル(約16兆円)規模となる模様だ。今日は敵なしに見えるアントのリスクファクターについて考察したい。

 

アントフィナンシャルに死角はないのか?リスクファクターの分析!

当サイトでは、中国特有のビジネスモデルである総合フィンテックモデルや提供されるサービス内容について強い関心を持っている。総合フィンテックの代表格であるアントフィナンシャルの上場観測記事が増え、一部のメディアでは2018年下半期にも香港市場を中心に同時にCDRを活用した中国本土のA株上場が本命視されている。上場時の推定時価総額も上方修正され1500億USD(ドル(約16兆円)規模との報道もある。

その一方で昨年半ばあたりから気になる動向が幾つか出てきている。総合フィンテック特集第6回目の本稿では敢えてアントフィナンシャルのリスクファクターを取り上げてみたい。

リスクファクター1:膨れ上がる借唄(ジエベイ)ローン額、ABS活用オフバランス化?

2018年1月中国人民銀行はアントフィナンシャルとの面談を行っている。詳しい情報は公開されていないが、巨大化するアントフィナンシャルに対して、当局がいつくかのリスク商品に対する指導を行ったようだ。まず、ターゲットとなったのは、アントフィナンシャルのキャッシングサービス「借唄(ジエベイ)」である。

参考記事:【総合フィンテック企業とは】第1回 借唄(ジエベイ)わずか3分で現金キャッシング|アントファイナンス 

アントフィナンシャルを代表商品であるキャッシング商品「借唄」を運営するのは、重慶に拠点を置く螞蟻小貸(アリシャオタイ)という企業である。2017年末時点の資本金は花唄と借唄双方で38億元であり、重慶の金融規制のルールでは資本金総額の2.3倍までのレバレッジを活用した消費者ローン提供を認めている。

さて、アントフィナンシャルの2017年第三四半期のバランスシートを見てみると借唄単独の資本金は18.09億元であり、バランスシート上のローン貸出しは、43.38億元、資本金の2.3倍(41.6億元)を若干超えたところにある。オーバーしていることに間違いはないが、規制値から若干の違反ということで経営を根幹から覆すようなリスクとは言えない。

しかし、借唄が今までにリリースしたローン総額は3000億元規模にのぼると言われている。この数字は財務上の数字と辻褄が合わないのである。そこで活用されているのが貸出ローンを原資産としたABS(Assets Backed Securities)なのである。もちろんABSを活用することで、螞蟻小貸(アリシャオタイ)はオフバランス化することに成功しレバレッジを効かせる形で有効にビジネス展開しているのである。

問題はこの原資産であるローン債権は果たして健全なのであろうか?健全であるとしてもレバレッジ規模は妥当なのだろうか?外部から的確に判断できることではないが、2014年から2017年の間に螞蟻小貸(アリシャオタイ)の純利益は9倍に拡大しており、無理な融資が行われていると推測する人がいても不思議ではない。中国当局としては中身、レバレッジ規模についてより注視する必要があると感じていることは間違いなく、1月の会合のあとユーザーの中で借唄の使用を制限されているものもいるようだ。

リスクファクター2;余額宝(ユエバオ)の運用実態!?

アントフィナンシャルの商品でもっとも有名なものがこの余額宝(ユエバオ)であろう。

参考記事:【総合フィンテック企業とは】第4回 :機能と機能の重要なつなぎ役「余額宝」(ユエバオ)の秘密に迫る!?

余額宝は、2017年第3四半期末時点の運用資産1兆5600億元(23兆円)規模に達し世界最大のマネタリーファンドとなっている。

余額宝(ユエバオ)運用額の推移(出典李民民)

ここにも、中国の中央銀行の規制が見え隠れしている。当初ユーザー1人に対して100万元まで自由に購入できたものが、2017年5月、25万元までの上限へと引き下げられた。さらに2017年8月14日には10万元に引き下げられ、2017年12月8日には1日に購入できる上限額が2万元と矢継ぎ早に制限された。

今年になって2月1日から3月15日までの期間限定で1日の販売枠が設けられユーザーはその枠が朝9時に解放されると先着順で買付する形となった。ユーザーは希望通りの額を購入できない状態が続いており当初3月15日までであった規制期間は現在も継続している。

規制理由は明確にはわからない。アントフィナンシャルが提供する総合フィンテックビジネスモデルの中核である余額宝に規制が入ることは、ユーザーの利便性に直結する大問題であることに疑いはない。

P2P商品に関する問題点。 招財宝(ジャオツァイバオ)から定期理財へ

2014年にスタートした招財宝(ジャオツァイバオ)は、公式には表明されていないがP2Pを活用したレンディング機能である。現在は、アント財富の一機能として定期理財に組み込まれている。招財宝(ジャオツァイバオ)は現在トップページだけが残っているが商品はここ2年ほど販売されていない。

こうした商品は銀行保証、保険会社保証という形で、金融機関保証する形で販売されているが、実際の借り手が返済不能となった場合には金融機関の保証額をめぐり問題が発生する可能性はなくはない。

アントフィナンシャルが提供する定期利財商品は、他社と比較すると比較的金利が低い(6%程度)ものが多く比較的安心だと言われている。他社のP2P商品をみてみると金利10%程度の高金利商品も多く販売されているので、比較問題としてはリスク管理されているということなのかもしれないが、P2Pレンディングをめぐる中国当局の規制は昨年以降格段に強化されている。

さて、今回はアントフィナンシャルのリスク要因について記載した。これだけ大規模になった総合フィンテックモデルにおいて、リスクとどう向き合い全体を制御していくかは今後の大きな課題となるだろう。