ファンビンビンの巨額脱税問題は、氷山の一角なのか?エンタメ業界全体に波及するのか?

ファンビンビンの巨額脱税疑惑は、ついにファンビンビン側が8億83万元(約150億円)を支払うことで合意決着した。だが、ファンビンビンの一件だけではこの問題は終わりそうもない。今後、中国のマクロ動向の悪化と呼応するように関連する問題が噴出する予感である。

 

ファンビンビン(范氷氷)に総額8億83万元(約150億円支払い命令!経緯まとめ

中国の映画スターのファンビンビン(范氷氷)に、脱税疑惑が指摘されていたが、ついに10/3ファンビンビン側が8億83万元(約150億円)にも及ぶ滞納金や追徴金を支払うことで合意された。

脱税疑惑の発端は今年5月末、元CCTVのキャスターである崔永元(チェ・ヨンウォン)氏が芸能界の陰陽契約書(脱税のための裏契約書)を公開したことで、国家税務当局が地方税当局へ調査依頼したことだとされる。

その後、数ヶ月に渡りファンビンビンは公式の場から完全に姿を消し行方不明となり、一部では政治家や軍の関与が指摘されるなど、中国で連日報道が行われていた。ついに10/3、中国国家税務当局がファンビンビンの「陰陽契約」脱税事件の調査結果を発表し、ファンビンビン側に滞納金や追徴金などを含め総額8億83万元(約150億円程度)もの支払いを命じたのである。ファンビンビンは、この発表を受け同日昼に自身の微博で謝罪文を掲載し、当局の決定を完全に受け入れると発表し税務当局の決定に従った。世間を騒がした、巨額脱税問題は一件落着したかのように見える。

 

中国エンタメ業界、映画関係者の脱税問題は今後も続くのか?

ファンビンビンの脱税疑惑が一件落着し、エンタメ業界はこれで一安心かと言うとそうではないようだ。

中国国家税務当局は、エンタメ業界関係者に対し独自調査を強化すると明言し、既に関係者を絞り込み税務調査を進めているという。税務当局の発表では、2018年12月31日までに自ら訂正申告を行うものには行政処分を免除するという通達まで出している。なにやらきな臭い動きが漂ってきている。

当局が設定した猶予期間終了後に、エンタメ業界を揺るがすより大きな問題が噴出するかもしれない。ファンビンビンを狙い撃ちしたように見えた脱税問題であったが、どうやら業界全体をターゲットとして2019年にさらに大きな問題が飛び出すかもしれない。

 

なぜ中国は今になって中国のエンタメ業界の監視強化を行なうのか?

今年に入り中国マクロ統計が急速に減速を見せている。不動産市況も取引量が大幅に低下している。とりわけ今年の7月以降の不動産市場の停滞感は強く、公表される政府の不動産統計よりも実勢不動産市場ははるかに冷え切っている印象が強い。

こうした、状況の中で高額な報酬を得ている映画俳優などのエンタメ関係者への国民の不満は高まっており、中央政府がそれをスケープゴート的に標的にすることでマクロ経済への不満を逸らす狙いもあるという声が聞こえてくる。

実は、中国のエンタメ業界は税金優遇産業として有名で、一部の映画監督、映画俳優、プロデューサーなどは中央政府と地方政府間の租税政策格差を利用して、地方にペーパーカンパニーを設立することで、各種手当や免税政策を利用しているのが一般的であった。例えば、中国とカザフスタンとの国境付近の町は、エンタメ産業のためのタックスヘブンと化しており、設立後5年間の所得控除を受けられるだけでなく、個人に関する所得税も存在しない。小さなタックヘブンの町に税金回避のためだけに多くの会社が設立されているのである。地方政府が厳格に調査しないことも手伝い、多くのエンタメ関係者が優遇政策以上の租税回避行為を行なっているというのが関係者の見立てなのである。

7/20、新しく中国中央政府は、国税局と地方税務局を一体化する組織改革案を提出し、従来地方政府が決定できた租税に関する条例を中央政府の監視下に置きコントロールしようとしている。中央政府が地方の徴税権に対する調査権限を得たことで、エンタメ業界における地方政府を活用した租税回避スキームに対する締め付けも確実に強化されるであろう。

 

中国の映画興行収入の記録更新に湧くが、それは本当か?

今年2月における単月の中国映画興行収入は100億元(1650億円程度)の大台を突破し、記録を更新したと話題になった。単純比較するとアメリカの月次記録が2011年7月に記録された13億9500億ドル(日本円1590億円)とされているので、中国の記録が如何にものすごい数字か理解していただけるだろう。

確かに、体感として中国では映画人気が高まっており、以前に比べてチケットを好きな時間に好きな座席で入手するのは困難になっているが、とはいえ映画を見るのにそれほど苦労した記憶はない。2018年2月は春節も重なりとりわけ春節期間の7日間だけで、57億元以上の興行収入を記録しのべ1億4000万人以上の人が映画鑑賞をしたという。

この数字が本当ならば、わずか7日間で国民の10人に1人が映画を見た計算となる。そんなことがあり得るのだろうか?

実は、この数字に対して以前から疑念の声が挙げられている。映画の興行収入をあげることによって、メリットを得られるなんらかのグループの存在するというのである。このところ、中国では個人が銀行で外貨両替することも、以前に比べ困難になって来ている。中国の外貨準備率は昨年に比べ減少しており、外貨両替に対する締め付けが厳しくなっているからである。

中国のマクロ経済が悪化する中で、中国元から外貨に変換したがっているグループも多く、興行収入を活用することで外貨を獲得しているグループの存在が疑惑めいた指摘がなされているのである。

この話が単なる噂かどうかはわからない、しかし中央政府がエンタメ業界に対して締め付けを強化していることは間違いない。この締め付け強化の結果いかんによっては、来年以降エンタメ業界に関して悪いニュースがながれてくるのかもしれない。

三連休の前ということで、今日はテクノロジーとは無関係の中国エンタメと中国マクロ状況を絡めてゆるいお話をしてみた。

Facebook
Twitter
Email
Print