中国シェア自転車を巡る企業競争はリタイア続出で終了へ。生き残ったのは予想通り「Ofo」と「Mobike」の2社だけ

わずか数ヶ月前まで群雄割拠の大競争が繰り広げられた中国シェア自転車業界であるが大方の決着がついたようだ。60社以上の中小企業が倒産しテンセント陣営「Mobike」とアリババ陣営「Ofo」の2社だけが生き残った。いったいシェア自転車ブームとは何だったのであろうか?

 

シェア自転車業界60社以上が倒産あるいは行方不明。消えたデポジットは1億元(17億円)以上

中国ビジネスに詳しい専門家は、中国のビジネス展開は早いと皆が口をそろえる。しかし、そうした中国ビジネスを知り尽くした専門家でさえも今回のシェア自転車を巡る激動の2年間は驚愕に値するドラマのようだ。

中国政府が発表する「オンライン発展状況統計報告書」によると、2017年9月までにシェア自転車事業として登録されていた60社の企業が事実上の倒産状態だと言う。おそらく、登録されていないシェア自転車企業を入れると100社以上が倒産したものと推計される。

OfoとMoBikeの2大企業につぐ地位で業界では知名度が高い「悟空単車」「町町単車」「小鳴単車」「酷騎単車」なども、相次いで不渡りを出し倒産したことが確認されている。

倒産した企業の多くは、おおよそ99元から199元のデポジットを支払うことでユーザー登録しシェア自転車を使用できるようになっていたが、そうしたデポジットの大半がユーザーに返還されていないという。推計では保証金だけで1億元(17億円)ほど、チャージされた前払い代金を入れるとその倍程度のユーザーの資金が行方不明となっている。放置されたままの倒産企業のロゴのついた無残なシェア自転車の残骸だけが町の片隅に横たわっている。

シェア自転車は、もともとシェアエコノミーの仮面を被ったレンタルビジネス?

シェアリングエコノミーとは、当初のAirbnbのビジネスモデルの謳い文句によるとユーザーが保有する遊休資産を有効活用することに主眼が置かれたいたように思う。しかし、現在ではビジネス面に力点が置かれ、実態は運営会社が保有する資産をレンタルするビジネスに近い状態になっている。

中国のシェア自転車も同様に、実態はシェアエコノミーとはかけ離れた、巨額の初期投資を行い自社で保有する自転車をレンタルするビジネスモデルへと変貌していった。今にして思えば、それほど高度なテクノロジーを活用したわけでもなく、単なる自転車の時間貸しレンタルビジネスだったのかもしれない。

自ら自転車を所有することから全てがスタートするレンタルビジネスは、中小企業にとっては体力だけが頼りの負担の極めて重いビジネスモデルだったのかもしれない。

最終的にはアリババ「Ofo」とテンセント「Mobike」の2大巨人が独占

多くの中小企業シェア自転車企業は、北京や上海という大都市を避け、中規模都市からビジネスをスタートさせた。大手との競争を避け、大手が参入していない小さい市場の独占を狙ってのことである。中規模の市場を独占した後に、最終的には大手のシェア自転車企業に売却するという意図を持っていたと考えられる。しかし、OfoとMobikeは強烈なスピードで資金調達を行いその潤沢な資金で、中小のシェア自転車企業が展開する中規模の市場を含めて短期間で中国全土を圧倒してしまった。

2016年4月からサービスをローンチしたMobikeは、同年10月のCラウンド資金調達、および2017年1月のDラウンド資金調達(2.15億USD)でテンセントから資本を獲得した。テンセントの資金を得たことはWeChatの協力を得られることを意味する。WeChatアプリにMobikeをはめ込む(ウィジット)ことで一気に一億人以上のユーザーの獲得に成功した。もちろん決済はWeChatPayを活用することとなった。

一方の2015年7月にサービスをローンチしたOfoは、2017年4月にアリババグループのアントフィナンシャルの資本を獲得している。その後にアリペイと連携することで、ユーザー数を急速に拡大していたった。さらにアントフィナンシャルの提供する芝麻信用と連動させることによって一定の信用スコアを満たしたユーザーに対して、デポジットなしでシェア自転車を活用できるようにするなど、決済ツールと信用スコアと連携させながらユーザーの利便性の向上を目指して行った。

結局のところ、アリババの後ろ盾を獲得したOfoと、テンセントの後ろ盾を獲得したMobikeの2社が、両者のもつ決済ツールと連携して圧倒的な存在感を示すことになったのである。

シェア自転車ビジネスとは一体なんだったのか?主人公はシェア自転車でなくモバイル決済!

Ofoは現在1000万台のシェア自転車を世界80カ国の200の都市で展開している。一方のMobikeも同様に800万台のシェア自転車を世界の200の都市に配布している。

そもそも、中国のシェア自転車ビジネスの競争とは何だったのだろうか?

成功した2社には特徴がある。アリババが出資したOfoとテンセントが出資したMobikeは、両者が普及させたかったモバイル決済を広めるツールとして抜群の威力を発揮したのである。

人々の身近な存在であるシェア自転車にモバイル決済の仕組みを付加することによって、抜群の相乗効果を発揮して瞬く間にアリペイとWeChatPayのユーザー拡大を助けたのである。

しかも、モバイル決済から得られる人々の移動に関するビッグデータを同時に取り込めるというおまけまでついてきた。

今にして思えば、アリババとテンセントが強力にシェア自転車に対する投資を推し進めたのは、当初から決済ツールの普及とそこから得られるビッグデータの価値に目的があったのは間違いない。おそらく、アリババとテンセントは最初からそれに気がついていたのであろう。

アリババとテンセントは、両者の保有する「アリペイ」と「WeChatPay」を拡大できるツールであれば、シェア自転車でなくてもツールは何でもよかったのである。

シェア自転車ビジネスを、自転車の利用料だけで黒字化しようとするならば、多くの中小企業が辿ったように倒産一直線のなんの魅力もないビジネスということなのかもしれない。主人公はシェア自転車でなく「モバイル決済」。自転車はあくまでもモバイル決済を普及させる脇役に過ぎないのかもしれない。中国のシェア自転車競争の本質はそこにあるように思えてならない。

現在、日本でもシェア自転車に対する試みがなされている。果たして、日本版シェア自転車が成功モデルとなるのであろうか?鍵を握るのは中国と同様に決済ツールとなるのであろうか?大変興味深い。

いずれにせよ、中国でのシェア自転車を巡るブームはひとまず終了したといって良いだろう。

参考記事:

中国シェアエコノミー異変あり、突然死が続くスタートアップ、シェアエコノミーの真の成功とは!? 

中国シェア自転車ビジネスの問題点 改善のため中国政府がガイドラインを発表。シェア自転車|中国

「Mobike」本社のある深セン シェア自転車規制発表後のマナーの変化 Mobike/中国