深セン証券取引所がニューエコノミー企業の主戦場へ!?中国預託証券(CDR)の導入

年内にも深セン証券取引所に中国預託証券(CDR)の制度が導入される。既にアリババや京東などが深センA株上場に関心を示している。中国ユニコーン企業の新規上場が深センA株へ上場することも予想され証券市場に大きなインパクトとなりそうだ。

 

中国預託証券(CDR)とは!?中国人が中国本土で実質中国企業の株式を購入する制度!?

以前から深セン証券取引所がCDR(中国預託証券)制度を導入し、現在アメリカ市場などに上場しているアリババや京東といった中国企業を中国本土に誘致すると言われていたがいよいよCDR制度が年内にも実現する運びとなりそうだ。

CDRとは(Chinese Depositary Receipt)と呼ばれるもので、アメリカ市場で上場されているADR(American Depositary Receipt)がモデルとなっている。

ADRとは一言で説明すれば、アメリカにいる投資家がアメリカ以外の外国企業に対してUSDベースで投資できるように設計された制度である。例えばインドを代表するIT企業であるインフォシステクノロジーは、ボンベイ証券取引所に上場されている企業であるが、インドの個別株を外国人が購入することは制度上許されていない。そこでインフォシステクノロジーがADRをNYSE(ニューヨーク証券取引所)に上場することで、アメリカにいる投資家がボンベイに上場されているインフォシステクノロジー株式とほぼ同等の株式を購入できるのである。日本企業でもトヨタ自動車、野村ホールディングやソニーなどもADRをアメリカに上場することで、アメリカにいる投資家が積極的に取引に参加しているのである。

 

なぜアリババや京東といった中国企業株式が中国本土で取引できないのか?

多くの日本人は不思議に思うだろう。中国企業の株式がなぜ外国人投資家を前提に設計された預託証券制度を導入しないと中国国内で取引できないのと?

実は多くの中国民間企業が香港籍だったり、タックスヘブンに本籍を置いているため、中国の証券取引法制からすると制度上は外国籍企業扱いとなってしまうのである。そのため中国国内の上場基準を満たすことが出来ずに、アメリカ市場や香港市場で上場されていたのが実情なのである。ここら辺は、国有企業が経済の中枢を握っていたかつての中国経済の歴史が見え隠れする部分である。例えば、アリババは本社活動を杭州を行なっているが法人登記は有価証券報告書を確認しても香港「Causeway Bay」の一角となっているのである。

なので、CDR(預託証券制度)という制度を活用することによって、中国本土以外で登記された実質中国企業が中国本土で上場することが可能となるのである。

 

アリババや京東も中国市場に回帰するのか?

実は多くの中国人投資家は、ここ数年続いているアリババ(NYSE)、京東(Nasdaq)、テンセント(香港)、百度(Nasdaq)の株価上場の恩恵を直接的に受けていない。中国本土にいる中国人投資家にとって海外の個別株を購入するハードルは高い。中国企業の時価総額が上昇してもそれに個別株に投資する機会が奪われているのである。

また兼ねてより、海外上場している中国企業は正当な評価を受けていないとの批判も多く存在していた。なぜならその企業のサービスを利用している中国人ユーザーが投資できる環境にないため買い圧力に制限が加わり正当な評価を得られていないというのである。

これに関しては、面白い事例が存在する。中国第2位の検索エンジンであった奇虎360という企業が、2016年当時上場していたNYSEに置いて非上場化を宣言し、MBO形式により経営陣が全株式を既存株主から買取し上場廃止にしてしまったのである。創業者周鴻禕のコメントでは「アメリカでの上場時価総額80億ドルは当社の企業価値を正確に反映してない」というもので、経営陣が株価が評されないことに不満を抱き、全株自分で買い取って非上場化してしまったのである。その後、2017年に中国の上場企業である嘉捷エレベーターを買収することで実質的な裏口上場を果たし上海A株に再登場を果たし創業者のコメントを裏付けるように株価は4倍以上の上昇を果たしたのである。既に上場している企業を買収して裏口上場する手法は中国企業が一時期頻繁に活用した強引な手法ではあるが、株価が4倍になってしまっては確かにNYSEと中国市場には企業評価に差異があると言われても仕方がない。

Nasdaq上場を果たしている京東やNYSEに上場するアリババの関係者の間でも、会社規模や財務数値と比較しても、株価は妥当でないと見る向きも多い。CDRを活用する形で深センA株にこうしたIT企業の株式が登場すれば、中国本土の投資家から高い注目が集まるのは必須であろう。

 

ユニコーンの上場先として深センA株が選択肢に!

このニュースは、今後上場する中国ユニコーン企業たちにとっても朗報となるだろう。CBInsightsが3月5日に公表した最新のユニコーンリストによれば、現在全世界のユニコーン企業数は231にのぼり、アメリカ114社で約半数であり2位の中国は62社と全体の27%を占めるに至っている。

     CBinsightsの公表数値よりGlotechTrendsがグラフ作成

こうした強力な中国の上場予備軍が深センA株を目指すことになれば、その影響は証券市場にとっても大きなものとなるだろう。深センでは現在金融地区の開発が進められているが、スタートアップ企業が集まる創業板に加えて、深センA株がユニコーンの新規上場の選択肢として加われば深セン市場の地位の向上にも繋がることは間違いないだろう。香港市場と目と花の先にある深セン市場との市場間競争の激化も今度の面白いテーマとなりそうな予感である。

中国ユニコーン企業が、今度どこの市場に株式上場を果たすのかという動きも今後の面白い注目ポイントとなりそうである。

*なお本記事は、読者の皆様の株式投資判断に影響を与える意図で書かれたものではないのでご留意いただきたい。