【キャッシュレス社会のデメリット】第4回 キャッシュレス社会で消えゆく仕事とは?

 世界中で社会のキャッシュレス化が急速に進み、社会構造の変化が起きている。数年前まで当たり前だった現金支払が急速に減少し、キャッシュレス化は同時に無人化を加速させている。キャッシュレス社会の行き着く果ては、無人化に伴う大失業時代がやってくるのだろうか?

                                     

⌈中国では、真っ先に泥棒が無職になった!
⌋

中国では、キャッシュレス社会は進み出した頃、警察に逮捕されようとするコンビニ泥棒の動画がインターネット上で公開されたことがある。

ある田舎から杭州の街にやってきた男が、4つのコンビニを立て続けに泥棒に入り、レジ現金を窃盗しようとしたのあるがどこのレジにも十分な現金が無かったため窃盗できなかった。

泥棒が「杭州の街のコンビニにはどうして現金がないんだ?田舎と杭州を往復する電車代にもならない。」叫ぶ動画が、キャッシュレス社会が進む中国で面白おかしくインターネットで晒されてしまったのである。都会の住民がキャッシュレス社会を知らない田舎者として、瞬く間にネット上で拡散され、犯罪者とは言え人権を無視した気の毒な晒し映像であった。

そう、キャッシュレス社会では、最も伝統的な職業(?)とも言える現金を狙った泥棒、これが真っ先になくなったのである。スリも同様である。皆が現金を持ち歩かなくなった現在は、中国では、現金を狙った泥棒とスリが失業して消滅してしまったのである。

 

⌈偽札工場の閉鎖

泥棒よりもよりブラック度が高い犯罪(職業?)として、偽札製造がある。今、中国の偽札工場は、リーマンショック級の歴史的な大不況に襲われているという。北朝鮮にある偽札工場の中国紙幣部門も数年前とは状況が様変わり。現金のニーズがなくなったのだから、偽札も淘汰されるのは当然といえば当然である。警察が摘発してもまた新しい場所で製造を始めるという、いたちごっこを繰り返していた伝統的な偽札製造組織が、キャッシュレス社会という社会構造の変化の前で、あえなく倒産してしまったのである。

 

⌈高度化するネット犯罪、電子詐欺の増加⌋

泥棒やスリ、偽札工場といった伝統的な犯罪は減少し街中の治安は改善したが、そのかわりとして電子的泥棒、電子詐欺などの知能犯罪は逆に増加し、サイバースペース上の治安は逆に悪化していることは忘れてはならない。

2016年7月、中国最難関の名門大学である清華大学の教授が、人民元1800万元(約3億円)に及ぶ電子詐欺に遭遇した。台湾の偽の検察官を装う相手からの巧みな交渉によって、電子決済で大金を支払ってしまったのである。また2016年8月にも、大学に入学したばかりの学生に、言葉巧みに学費や奨学金の援助制度の話を持ちかけ、9900元を前払いの授業料として騙し取られ、その学生は気絶し数日後に死亡してしまった。キャッシュレス社会にはデータが溢れ、犯人はターゲットを絞りながら言葉巧みにネットの世界から忍び寄ってくるのである。

伝統的な泥棒やスリは姿を消したが、それに変わる新しいハイテクの犯罪が生み出されている。新しテクノロジーの進化は、伝統的な犯罪をあっという間に消滅させるが、それを狙った新しい犯罪が生み出される。新しいテクノロジーは、常に光と闇の両方の的な側面を併せ持っていることを忘れてはならない。

 

⌈キャッシュレス社会が、無人化を促進し多くの職業を消滅させる!?⌋

キャッシュレス社会は、アリペイやWeChatPayという仕組みとリンクして、社会の無人化を促進している。例えば、無人コンビニである。入店時に、アリペイやWeChatPayのアカウントで個人認証し、買い物を行い、キャッシュレス決済するという流れである。そこには、レジ担当は当然として、従業員の姿もない。キャッシュレス社会が生み出すのは、まさに無人化社会である。

同様の仕組みが、無人スポーツジム、無人ガソリンスタンド、無人レストラン、無人スーパーマーケットなど、次々と従業員のサポートを必要としないサービスが誕生している。これらの具体的なサービス内容のは当サイトにおいても取り上げているので、詳しくは過去記事をご覧いただきたい。

キャッシュレス社会は、無人化を促進する。キャッシュレス化に加えて自動化が同時に起こりさらなる無人化を加速させる。これはすでに社会現象としてありこちで起きている事象である。当然ではあるが、無人化の流れに飲み込まれた伝統的な業務に従事していた人間の相当数が職を失うことになる。

中国では服務員(フーウーユェン)というウェイトレスが最も簡単な仕事として社会に評価されている。レストランのウェイトレスは、需要も高く給料さえ妥協すれば誰でも簡単に仕事を見つけることが出来た。

それが、無人レストランが一般化すればウェイトレスが必要となくなる時代になってしまう。もし、代替的な仕事が供給されず無人化だけが促進すれば、こうした労働人口は行き場を失い社会構造が大きく歪むことになるだろう。

参考記事:

無人コンビニ:well gobingoboxjingdong

無人スポーツジム

無人ガソリンスタンド

無人レストラン

盒马鲜生フーマーシェンシェン

 

⌈銀行、証券、会計士、専門的な仕事でも安泰ではない!
⌋

高い学位を保有し、専門的な職業に従事していると安心している人も実は安泰ではない。

銀行や証券会社などの金融機関あるいは、会計事務所でもインフォメーション化の流れを受け従業員削減が世界的なトレンドとなっている。日本のメガバンクにおいても万単位の人員削減を発表しているところがあり、キャッシュレス社会や人工知能、フィンテックの発展が金融機関の人員削減に大きな影響を与えている。

キャッシュレス社会で、決済フローやお金に関するビッグデータで、全ての業務フローが効率化されると、従来のスタッフの半分で、同等以上の効果をもたらす時代がやってくる。高度な専門性を持つ人物でも、テクノロジーが効率的に業務を遂行する前では、仕事を喪失することとなる。

 

⌈国の造幣局の閉鎖⌋

記事の冒頭に記載した偽札工場の閉鎖は、犯罪撲滅の観点では好ましいことである。しかし、偽札工場でなく国の法定通貨を印刷する造幣局の閉鎖も発表されている。今年1月デンマークの中央銀行は、デンマーク国内での紙幣印刷部門の全てを閉鎖した。もはや紙幣や硬貨などの現金を、新規に印刷しないことを意味している。国がもはや紙幣を印刷する仕事を消滅させてしまったのである。

 

 ⌈中国のキャッシュレス社会では、VISA MASTERなどのクレジットカード会社も消滅!?⌋

中国のキャッシュレス社会を代表する「アリペイ」や「WeChatPay」は、日本や欧米で実現されているキャッシュレス社会と少し異なる。欧米のキャシュレス社会では、例えばApply Payなどの決済アプリに事前にクレジットカードを紐づけて活用するのが一般的である。スマホで決済してもあくまでクレジットカードを経由したキャッシュレス決済となる。しかし、「アリペイ」や「WeChatPay」はユーザーと店舗側で直接決済を可能にする。そこには、間に入るVisaやMasterは介在しない。そう、中国のキャッシュレス社会では、VisaやMasterといった伝統的なクレジットカード会社でさえ、仕事を喪失する危機がある。

ファーマーシェアンションのキャッシュレスカウンター

 

⌈ガーディアン(The Guardian)発表のなくなる仕事の確率ランキング⌋

 キャッシュレス社会では、多くの伝統的な仕事が消滅の危機にさらされることがお分りいただけたと思う。具体的な事例をあげるのはキリがないので、最後にイギリスの一般新聞である「The Guardian」に掲載されたかくなる可能性の高い職業ランキングの記事を参照にさせていただくことにする。

元の記事は2017年6月26日に発表されたロボットによる自動化による職の喪失に関する記事である。直接の記事をご覧になるには、以下のリンクを参考にしていただきたい。https://www.theguardian.com/us-news/2017/jun/26/jobs-future-automation-robots-skills-creative-health

TeleMarketer 99%, Loan Officer 98%, Casher97% Paraleagal and Legal assistant94%, Taxi Driver89%, Fast Food Cook 81%という数字を提示して、自動化され職として消失する可能性を提示している。

 

⌈キャッシュレス社会のデメリットまとめ⌋

GlotechtTends(グローバルテクノロジートレンド)としては、今後もキャッシュレス社会の新しいトレンドを継続的にウォッチしていくつもりである。

今回、特集記事として「キャッシュレス社会のデメリット」について4回に渡り記載した。今回の記事では、敢えてデメリットについてスポットを当てたが、当サイトの立場としては、キャッシュレス社会が我々に明るい未来をもたらすことを信じている。

日本でもやがてキャッシュレス社会の実現に向け本格的に動いていくこととなるだろう。そのための議論としてデメリットの部分も議論した上で、キャッシュレス社会をより良い社会としてデザインできる未来になることを願いたい。