急速にハイテク都市化を進める「杭州」(ハンジョウ)!海外で教育を受けたハイスペック人材(海亀族)が杭州に!? 

中国では圧倒的にハイテク都市として深センの知名度が高いが、ここにきて杭州の注目度が増している。アリババ本社周辺には多くのスタートアップやアクセレーターが集まりシリコンバレー化が進んできている。次なる深センとなりうるのか?

 

存在感を増す浙江省の省都「杭州」シリコンバレーから本社移転する企業も

北上広深(北上广深)という言葉がある。中国の大都市、いわゆる一級都市を表した言葉である。北京、上海の超2大都市に加え深セン、広州を加えた4つが中国の一級都市だ。

実は、この一級都市の5番目の候補に杭州の名前が語られるようになってきた。アリババが本社を構えていると言う恩恵なのか、この数年で「杭州」の存在感が圧倒的に増して来たようだ。とりわけ、アリババ本社の周辺は未来城(未来科技城)と呼ばれ、スタートアップ企業やアクセレーターがたくさん集結している。まだまだ、深センに比べれば小さいムーブメントかもしれないが、杭州のシリコンバレー化は中国の新しいトレンドとして是非押さえておきたい。

また杭州は、ボストンのような教育の街としても知名度を上げつつある。中国有数の伝統校で浙江大学を中心に、最近ではジャック・マーが創業するビジネススクールである湖畔大学も開校を控え盛り上がりを増しているのだ。

アリババやテンセントの創設者たちが、杭州で大学や研究機関を開設し最先端研究に注力|アリババ

 

杭州の街が注目を集めるわけ 

実は、深センほどではないにしろ、杭州にも多数のアクセレーターやインキュベーションセンターが事務所を構えスタートアップ企業を強力にサポートする体制が整い始めている。

現在、杭州にオフィスを構えるアクセレーターやインキュベーションセンターの数は、杭州市だけで200以上を数え、国が関与する大掛かりなものは32施設を数えている。国がサポートするもの、浙江省がサポートするもの、杭州市がサポートするもの、あるいはアリババなどの民間がサポートするもの大小様々のスタートアップサポート機関が存在している。こうした機関がスタートアップ企業に提供するオフィス面積は総計で300万平方メートル規模になると言う。アクセレーターやインキュベーションセンターが関与したスタートアップやプロジェクト数は既に2万2000を超え、うち既に法人登記が完了したもので1万7000社を数えると言う。これらのスタートアップに関連する就業人口は22万人に迫り、スタートアップ企業をサポートする良好な環境が整備されているのである。

とりわけ注目に値する数は、海外から中国に戻る中国人(いわゆる海亀族=ハイグイズー)が創業した企業が4500社にのぼる点であろう。

杭州は、アメリカをはじめ世界の優秀な大学を卒業した人材、あるいは大学を卒業後にシリコンバレーなどでビジネス経験した人材に対しては、手厚いサポート体制で積極的に杭州での起業をサポートしているのである。

支援に関する詳しい条件などは、行政がそれぞれ対象の人材を面談し、彼らトラックレコードや必要度に応じて、サポート体制の内容を属人ベースで対応していくようだ。WeChatには、「大圣归来(dashengguilai)」と言うシリコンバレー周辺で仕事をしている人たちを対象としたコミュニティーが存在し、こうした場所で杭州に戻り起業した場合の条件や環境についても毎日のように活発に議論されていると言う。

現代において、世界中から優秀な人材を獲得し自らの都市で起業してもらうことは都市の繁栄と直結することを改めて痛感する話である。

 

1994年にシリコンバレーで創業した中華系企業ARCSoftも杭州へ本社移転を発表

先日、中国に本社移転を発表した企業を紹介したい。アメリカのシリコンバレーに本社を構えるARCSoft社(虹软/hongruan) と言う企業である。1994年にシリコンバレーで創業し、創業者は中国系アメリカ人であるDr. Michael Deng氏である。設立以来23年過ごしたシリコンバレーから本社機能を杭州に移すことを発表したのである。海亀族ならぬ海亀企業である。

ARCSoft社はスマホ時代の潮流にうまく乗り、シリコンバレーでも成功した企業である。現在は、小米、VIVO、OPPOなどスマホメーカーに搭載される高性能カメラを開発しており、逆光対応、一眼レフ機能、デュアルレンズ、手ブレ修正機能など高機能カメラを売りにしているスマホカメラの多くがARCSoft社のカメラである。

今後は本社を杭州に移転し、人工知能分野で中国企業と連携を深める予定だと言う。中国に戻り最初に注力する仕事は、ビジュアル人工知能エンジンを活用した AI画像認証プラットホーム構築だと言う。

画像認識の分野は、無人コンビニや無人リテールの分野と融和性が高いことから、ニューリテール戦略を進めるアリババが本社を構える杭州で研究開発を進めることでビジネスがより加速すると考えているようである。

ARCSoft社だけでなく、最近アメリカで活躍している中国企業が、本国にリソースを再配分する話を頻繁に耳にするようになってきた。中国系アメリカ企業の本国シフトは、今後の注目すべきトレンドとなりそうな予感である。