アントフィナンシャルによる日本人向けアリペイ決済日本進出延期について

日経新聞によれば噂されていた日本人向けアリペイ決済が邦銀の協力を得られず暗礁に乗り上げているという。アントフィナンシャル海外展開に注目している当サイトしては、今回のケースに関しても当サイトの見解を少し考察しておきたい。

 

アントフィナンシャルが推し進める海外展開について

最初に現段階でアントフィナンシャルが実行しているグローバル展開について少しおさらいしておきたい。現在、アントフィナンシャルがアジアで海外展開している国は、韓国(KakaoPay)、 香港(ハッチソン)、タイ(Ascendo) 、マレーシア(CIMBBank)、フィリピン(アヤラ)、インドネシア(Emtek)、インド(Paytm)などに及びほぼアジアの主要な国の現地のローカル企業と提携しビジネスを展開している状況となっている。先日もさらにパキンスタンの進出を決定したお話は当サイトでもご紹介している。現地有名大手企業ばかりと提携しビジネスを進めているのである。提携側のローカル企業としても、アントフィナンシャルとパートナーシップを結ぶことはビジネス拡大の大きなチャンスとして認識されている。

参考記事:

3月13日アントフィナンシャルがノルウェー通信大手Telenorと共同でパキスタン進出を発表

【キャッシュレス社会の撃】アリペイ(アントフィナンシャル)のマレーシア展開 CIMBの子会社Touch ‘n Goがアリペイと提携|マレーシア

アントフィナンシャルがフィリピン進出、試算では既にゴールドマンサックスを凌駕する時価総額へ!

なお、アントフィナンシャルはグローバル戦略を推し進めるにあたり全世界でアリペイユーザーを20億人にするという壮大な数字を掲げている。現在アリペイユーザーは主に中国人であり約5億人と言われている。海外展開を実現しグローバルユーザーを巻き込み4倍にするという計画である。

 

アントフィナンシャルの日本進出に関して

実はアントフィナンシャルの日本進出に関しては当事者であるアントフィナンシャルからは正式なコメントは何も発表されていない。現在のアントフィナンシャルの日本業務としては、中国人観光客向けに快適なアリペイ決済インフラを提供することが最重要課題であり、現段階では日本人向けのアリペイ決済に関して日経新聞の報道以外にアント側から正式なコメントは行われていない。

当サイトでは、以前アントフィナンシャルの3段階グローバル展開戦略として彼らが推し進める段階的な海外展開戦略を記載しているが、その分類を活用すれば日本はまだステップ1の段階にすぎないことになる。ステップ1は、中国人観光客向けに限定し日本でアリペイ活用のインフラを構築する。ステップ2は、オンラインショッピングでアリペイ決済の活用の場を広げる。ステップ3は、ローカルパートナーと提携しローカルに向けた決済サービスを展開する。関心のある方は過去記事をご覧いただけると幸いである。

参考記事:

アントフィナンシャルの世界進出戦略!上場すれば時価総額はアリババさえも凌駕!?三段階ステップ戦略で世界制覇へ!?

万が一、他のアジア諸国のようにアントフィナンシャルがどこかの邦銀と提携し日本での決済業務のライセンスを取得するようなことに発展すれば、注目すべき大ニュースとなることは間違いないだろう。その場合には、おそらくアントファイナンスは、アリペイの名前を変更しローカライズ戦略を進めることになるだろう。

 

日本人向けのアリペイ決済となると決済情報流出危機と直結

ステップ3が実現すれば直ちに決済情報の流出問題と直結することになる。日本経済新聞の報道によれば、「日本の銀行口座を経由しようと模索したが、個人情報の流出を懸念する邦銀の協力が得られていないため(3月16日日本経済新聞電子版より)との理由で、国を超えたデータ管理のあり方が問われているという。

しかし話を少しシンプルに考えて見たい。現在の日本の決済状況はvisaカードやMasterカードによるクレジットカード決済がキャッシュレス決済の主流を占めている。クレジットカードで決済した場合の決済情報はどこに流れているのであろうか?Visaカードは、カルフォルニアに本社を置く世界最大のクレジットカード会社である。Masterカードは、ニューヨークに本社を置く同じくアメリカのクレジットカード会社である。

話は少し変わるが、日本人のスマホユーザーの大半はiPhoneを活用している。Apple Storeを活用したデータはどこに流れているのだろうか?Apple Storeで決済した何%のコミッションが自動的にApple社に流れているのだろうか?今話題となっているFacebookの個人情報、Amazonでの買い物データも然りである。既に多くの日本人のデータが知らず知らずのうちに海外に流出してしまっているのではないだろうか。

こうした国を超えたデータ管理のあり方は新しい話ではないのかもしれない。中国勢が日本にやってくる可能性が拡大し突如として具現化しデータ流出危機問題を指摘する声が俄かに高まっているのである。

逆に中国勢はアメリカへ中国人の個人情報が流出することを懸念して、独自に中国国内のプラットホームビジネスを拡大してきた。Amazonに対抗するアリババ、Facebookに対抗するテンセント。クレジットカード社会に対抗する形として、デビットカードをベースとしたアリペイやWeChatPayなのである。理想的には、日本も独自に自国内で情報管理できるようなインフラが必要なのであろう。

 

QRコード決済を活用しても、クレジットカート決済かデビット決済かでユーザーの摩擦は異なる。

アントフィナンシャルが展開するアリペイは、主にデビットカードの世界で展開される。日本ではデビットカードがあまり普及して来なかった。最近になって若干普及しつつあるが現段階でも日本にデビットカードは根付いていない。中国はクレジットカードがあまり普及していないので、逆にデビットカードが普及している。東南アジアなどの途上国でも、銀行口座を開設すればクレジットカードは別書類を記載し審査が必要となるが、銀行口座から直接即決済してしまうデジットカード機能付きのカードは当日のうちに発行してくれるためかなり普及している。

クレジットカードの場合は間に入るクレジットカード会社やイシュアーと呼ばれる発行会社などが合計4-5%程度の手数料を抜いてしまうので店舗に金額は少なくなってしまう。しかし、デビットカードの場合は決済金額が直ちに銀行口座から引き落とされるので、場合によっては手数料が全くなかったり、抜かれても1%以下というレートが大半である。店舗運営側からすれば、デビットカード決済の方では手取り収入が多くなるのは当たり前なのである。

現在、日本でも様々な新しい決済ツールがどんどん新規参入し決済競争が激化しているが、Eウォレット以外は基本的にApplePayのようにクレジットカード情報を事前登録する決済が主流なのではないだろうか。アントフィナンシャルのアリペイ決済はその大半がデビット形式決済となっているためはるかに手数料としての摩擦係数が低く店舗運営側にとってはありがたいはずである。

キャッシュレス社会の実現として、その象徴としてQRコードがもてはやされたが実はQRコードそのものがすごい訳ではなくその背後にあるデビットの仕組みが無駄なコストをそぎ落とし、普及が加速したというのがテーマの本質だったのかもしれない。

GloTechTrends(グローバルテクノロジートレンド)としては、クレジットカードとデビットカードの背後にある世界観や個人情報流出といった視点によりフォーカスを当てながら、今後もキャッシュレス社会の進化を見守ることにしたい。