アントフィナンシャルの世界進出戦略!上場すれば時価総額はアリババさえも凌駕!?三段階ステップ戦略で世界制覇へ!?

アントフィナンシャルの海外展開が加速している。来春から本格的なアリペイ日本進出も展開される。今回はアントフィナンシャルの海外戦略について分析してみたい。アリペイという決済ツールだけに目を奪われていると彼らの本質であるフィンテック企業の全貌を見失うことになる。

 

⌈アリペイだけが全てじゃない。アントフィナンシャルの事業概要。⌋

アントフィナンシャルについては、当サイトでも複数回ご紹介している。当サイトでは、フィンテックが実現する新しい未来像の鍵を握る会社であると考えているからである。「Bring small and beautiful changes for the world」(世界に小さく美しい変化をもたらす)アントフィナンシャルのスローガンであるが、まさにそれを実現し世界ナンバーワンのフィンテック企業として君臨している。

サービスラインアップとしては、①アリペイ(支付宝)決済②ユエバオ(余额宝)流動性の高い預金的な金融商品。③マイバンク(網商銀行)ローン提供サービス④芝麻信用(ジーマ信用)信用スコアリングサービス。⑤アントクレジットペイ(花呗)クレジット機能 ⑥保険:保険商品の販売。などがメインである。

詳細な業務内容については、繰り返しになるので詳しく知りたい方は過去記事を参考にしていただけると幸いである。

【キャッシュレス社会の衝撃】 第4回 小さな蟻が社会を変えた!アントフィナンシャル(Ant Financial)の大金融革命! |中国

 

⌈アントフィナンシャルが加速させる世界進出の動き⌋

アントフィナンシャルは、2015年7月のAラウンドで18.5億USDを調達し、2016年4月にBラウンドとして45億UDSを調達して上場目前かと思われたが方向転換し株式上場を延期して先にグローバル展開を加速することを優先することになった。調達した巨額の資金は、海外戦略のために振り向けられることとなった。

アントフィナンシャルが公表した海外戦略目標によれば、10年後には現在2億人いる海外のアリペイユーザーを10億人増加させ12億人に拡大し、中国国内アリペイユーザー8億人と合わせて合計20億人にするとしている。

ant financial globalization11/1アントフィナンシャル香港世界戦略発表会(写真:香港中国通訊社より)

 

⌈アントフィナンシャルの海外戦略は、三段階ステップ方式⌋

アントフィナンシャルは海外戦略を三段階ステップ方式に分けて、段階的な戦略を取っているようだ。最初に結論だけ先に言うと、

1、中国人観光客向けに限定し、海外で中国アリペイサービスを活用できるようにする段階。日本は今この段階であり、ローソンやビッグカメラなどが中国人観光客をターゲットにアリペイ決済を採用している。

2、アリババが運営する海外版Eコマースサイト「AliExpress」を通じて、オンラインショッピングの決済ツールとしてアリペイを活用する段階。

3、各国のローカルパートナーとアライアンスを締結し、アントフィナンシャルが中国で成功したフィンテックサービスを模倣し現地で展開する段階。

以上の三段階ステップによって、段階的に中国で積み上げたフィンテック企業としての経験を海外展開して行くのである。さて、各ステップの戦略を詳しく見ていきたい。

 

⌈グローバル戦略:ステップ1 

中国人観光客向けのアリペイサービス 現地人はアリペイを使っている中国人を端から「見る」

近年、日本でも中国人観光客向けにアリペイで決済できるお店が増えている。これは、何も日本が特別に美味しいマーケットだからアリペイが参入しているわけでなく、中国人観光客が行くところならどこでも見られる現象なのである。アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、オーストラリア。アジアでは日本、韓国、タイ、マレーシア、シンガポールなど、中国人が観光へ出向く人気観光地ならば、アリペイもセットとして進出して行くのである。

2016年末時点で、中国人観光客が海外でアリペイを何らかの形で使用できる国は70カ国に及び、18の通貨を直接的な為替交換レートを活用し有利なレートでサポートしている。

アントフィナンシャルが、第一ステップとして、中国人観光客に対してアリペイサービスを提供するのは、中国人観光客に便利さを提供することだけが目的ではない。

中国人向けに、アリペイが使用できますという看板を出せば、自動的にその国の人の目にも触れる。また、中国人がスマホを取り出して快適に決済している姿を見れば、あれば何だろうと関心を抱く。アジアの至る所でアリペイの看板の露出度は極めて高い。

現地人に中国人観光客が怒涛の勢いでアリペイを使っている姿を「見てもらう」。これが第一歩である。

今の日本では、巷でアリペイをよく目撃するようになった。まさにアントフィナンシャルの戦略ではステップ1の段階である。アントフィナンシャルの戦略通り現地人のアリペイに対する認知度は徐々に高まっている。

 

⌈グローバル戦略:ステップ2⌋  

  “Aliexpress”でのオンライン決済「使う」

合わせて、現在Eコマース最大手のアリババが海外戦略を加速させている。グローバルEコマースプラットホームである「AliExpress」を活用して、Eコマースの普及と同時にアリペイ決済を海外に輸出してしまう作戦である。世界で1億人以上の「AliExpress」ユーザーが何らかの自国の決済ツールとアリペイを連携させて活用している。導入国は現在20カ国以上に及びロシア、ブラジル、スペイン、フランス、ウクライナ、イスラエル、カナダなどが主要な参加国である。ステップ2では、直接的ではないのものの、何らかの形でアリペイを「使ってみる」段階である。東南アジアは、アリババが「Lazada」という東南アジア第一のオンラインプラットホームを買収したことで、一気に「AliExpress」の仕組みが東南アジアに普及することとなった。シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナムなどで加速する見込みである。「使ってみる」これが第2歩である。

 

⌈グローバル戦略:ステップ3⌋    

ローカルパートナーと提携。アントフィナンシャルは後方支援に徹しフィンテック技術を普及。(フィンテック分野での本格進出)

ステップ1で、海外のユーザーに対してアリペイを「見せ」、ステップ2で実際にアリペイを「使う」。そして、ステップ3において、いよいよアントフィナンシャルの本業である「フィンテック分野での本格的進出」が実行される。

ステップ3になると、アントフィナンシャルは、ローカルの強力なパートナーと提携を行う。例えばインドではPayTm, タイではAscend Group、マレーシアではCIMBバンク、韓国ではKakao Pay、フィリピンでは最大コングロマリット企業であるアヤラなど、どこもアントフィナンシャルの相手にふさわしい強力なパートナーを選定している。

ant financial globalization strategy

提携先のパートナーと協力して、アントフィナンシャルが保有するフィンテックサービスをローカライズしながら、ローカルパートナーが前面に出て、アントフィナンシャルはテクノロジー支援や経験によるアドバイザー的な後方支援に徹する形で、サービス展開して行く。アリペイ決済だけでなくアントフィナンシャルが得意とするフィンテック分野をあますところなく伝えることとなる。

これがアントフィナンシャルの海外進出の最終目的であり、最も意味のある重要な戦略として位置付けられている。今や誰もが疑う余地のない世界No1のフィンテック企業であるアントフィナンシャルのテクノロジーが現地のパートナーを通じてローカライズされるのである。

アジアの国は、どこも外国資本が金融サービスを展開することが困難である。それは資本規制という形で如実に現れており、外国資本が入っていると決済ライセンスや銀行ライセンスを取得することが困難である。従って、アントフィナンシャルは各国でパートナーを選定しパートナー企業が前面に出るかたちで海外進出を展開している。アントフィナンシャルは、経験から資本に拘りすぎると事業が何も進まないことを知っているのである。

例えば、アントフィナンシャルは、インドではPaytmと資本提携しているが、銀行業務を行おうとすれば、別会社を設立してインド資本100%の会社が銀行ライセンスを取得しなければならない。アントフィナンシャルは後方支援に一歩引いて後方支援に回る。そこでは、アリペイのブランドや中国で成功したブランドを活用する必要もなく、名前すらローカライズし柔軟に変更する。 

参考記事:【キャッシュレス社会の衝撃】 Paytmがインドのキャッシュレス社会の実現を加速!

アントフィナンシャルがフィリピン進出、試算では既にゴールドマンサックスを凌駕する時価総額へ!

 

⌈アントフィナンシャルの海外展開の狙い。アリペイ普及の先にある本当の狙い。⌋

最近、筆者も日本人の方からアントフィナンシャルに関する質問をよく頂くようになった。質問の9割以上がアリペイに関するものである。ここ数ヶ月で日本人のアリペイに関する関心が確実に高まったように思う。そういう意味では、アントフィナンシャルの世界戦略ステップ1は、日本でもうまい具合に進んでいると言える。

だが、実はアントフィナンシャルは、アリペイの普及だけを最終目的としている企業ではないことは忘れてはならない。アリペイだけにフォーカスしてしまうと、彼らの本当の狙いが見えなくなってしまう。本当の狙いはあくまでもステップ3にあるように、全フィンテック分野の世界進出なのである。

なぜアントフィナンシャルがアリペイに力を入れているのだろうか?

それは、決済データは全てのフィンテックサービスの基本となるビッグデータだからである。決済を把握すれば、ユーザーの習慣、嗜好、行動、生活様式、趣味、金銭的な思考、移動、公共料金関係、税金、資金的なトラブルなど、ほぼ全てを把握できてしまう。キャッシュレス社会が進み、アリペイのように決済手段としての独占率が高まれば、データとしての正確さも担保されデータ価値も向上する。

その上で、データ解析を行いユーザーの信用スコアを計算してスコアリング評価を行う。この信用スコアこそが、中国では「芝麻信用」といわれるもので、フィンテックサービスを提供する上での重要な基盤となる。

信用スコアに応じて、ユーザーに同一の商品を異なった条件で提供することが可能となる。これが世界No1のフィンテック企業と言われるアントフィナンシャルの真の狙いなのである。

ここまでたどり着くのは、至難の技であるが、アントフィナンシャルの海外戦略の最終的な目的地はここだと思われる。アントフィナンシャルがフィンテック企業として世界制覇してしまう日は、現実に来てしまうのかもしれない。表面的な決済手段としてのアリペイだけを見ていると、アントフィナンシャルの奥深い企業戦略を見落としてしまうだろう。

アントフィナンシャルは、果たして日本ではどことパートナーを組むのであろうか?アリババとの関係からソフトバンクを本命視しているが、意外なところが浮上して来るのかもしれない。楽しみな話である。

 

Gltoechtrends(グローバルテクノロジートレンド)としても、今後も継続的にアントフィナンシャルの海外戦略についてウォッチして行く予定である。現在、アントフィナンシャルを語る上で、必ず理解しておかなければならないアリババとの関係性を研究している。どうやら奥深いものがありそうである。近々、このレポートをお届けするつもりである。