アリババとテンセントは、キャッシュレス社会での世界制覇を本気で狙っていた|杭州、深セン

この2ヶ月間キャッシュレス社会の進展を体感するために、杭州と深センの二つの街を訪問した。アリペイの杭州。WeChatPeyの深セン。既に中国では圧倒的なパワーで市場を制圧し、いよいよ世界市場に本格的に攻勢をかける。世界中で認知され使用される日はそう遠くないのかもしれない。

 

  • 中国IT革命を体感したいなら、是非杭州と深センの二つの街に足を運ぶべきだ。

アリババが拠点とする杭州は、中国の浙江省の省都であり現在人口900万人。中国八大古都と称される伝統都市は、南宋の時代には中国の首都機能の役割を担ったこともある。世界遺産である西湖の周りの景観はまさに伝統的な中国のイメージそのままに現存しとても美しい街である。一方、深センは1980年に鄧小平の開放政策によって、深圳経済特区として指定されてから急速に発展を遂げ、現在では北上広深と呼ばれる中国4大都市の一つにまで上り詰めた。現在の人口は1400万とも2000万人とも言われ、人口構成として若いのが特徴的だ。

hangzhou

 

 

  • 杭州のアリペイ、深センのWeChatPay。この二つのモバイル決済は、既に中国市場でキャッシュレス社会化を実現し市場を制覇。

alipay wechatpay

杭州は、行政がアリペイの普及を全面的にサポートし100%のキャッシュレス社会化を実現するというだけあって、既に地下鉄やバスなどの公共機関に至るまでほぼ全ての決済でモバイルによるキャッシュレス決済で対応が可能であり、既に若い世代のほとんどが財布すら持ち歩かないようになっていた。ここは中国No1のキャッシュレス社会都市と言って良いだろう。

一方の深センは、杭州に比べると若干キャッシュレス社会化への移行は遅れている印象である。地下鉄やバスなどの公共機関でも相変わらず現金支払いの自動販売機に多少の列があるし、バスでは現金でしか決済できないケースもあった。だがポケットに予備のための少額の小銭さえあればほぼ問題ない。

総じて双方の都市とも携帯さえあれば、決済に関してほぼ苦労はしないキャッシュレス社会化が完全に構築されている。既にアリペイとWeChatPayの二大企業は、ほぼ中国の大都市での決済市場を制圧し、地方都市へも拡大中である。

 

  • クレジットカードとQRコード決済との違いとは?ズバリ摩擦係数が圧倒的に違う。

少し横道に話題がそれるが、QRコードを活用したモバイル決済がなぜそれほどまでに、決済システムに大きなインパクトを与えているのかを説明したい。この点を考えるには、クレジットカードとアリペイの違いを比較することが、問題点を鮮明に炙り出してくれると思う。

双方の差異、それはズバリ「摩擦係数」である。

具体的にクレジットカードの決済フローを使って簡単に説明することにする。

  1. クレジットカード会社は、ユーザーをクレジットカード申請時に審査して、ユーザーに一定の与信枠を与える。その金額以内の後払い形式の使用許可を与えると同時にプラスチック製のカードを発行する。
  2. ユーザーがクレジットカードを使って、カード加盟店で買い物をすると、店舗側は店舗に設置されたCAT端末からCAFISというオンライン与信照会システムを活用してユーザー信用照会を行い問題がなければ決済が完了する。
  3. 店舗は、クレジットカード会社から代金を事後に受け取ることになるが、クレジットカード会社からは手数料を差し引かれた代金が店舗に払いこまれる。

 

店舗側には、クレジットカード会社から手数料を差し引かれた代金が払いこまれるのだが、手数料とはクレジットカード会社が用意するCAT端末やらCAFISという信用照会システムの使用コストが付加される。代金を銀行から引き落とす際には、銀行間ネットワークシステム「全国銀行データ通信システム(全銀システム)」を使用して、代金を引き落とすことになるので、このシステムの使用代金もコストとして付加される。さらに、最近はカード会社同士がポイント競争しているため、カード会社が会員に与えるポイントコストも、自ずと店舗側のコストとして付加される。加盟店の業態やカード会社にもよるが、だいたい1%から5%程度(水商売系だと10%もあるようだ)が手数料として差し引かれることになっている。

こうした、間に介在する会社やシステムが多数存在することによって、摩擦係数が高くなり、コスト負担も大きくなるのがクレジットカードの仕組みなわけである。

一方、QRコードによる決済はユーザーの銀行口座とアリペイ口座を紐づけることによって、ユーザーと店舗が直接的に決済することが可能となる決済手段である。中間に介在するクレジットカードのような業者を排除し、中間の手数料を支払う必要がなくなり、摩擦係数が極めて低い決済を実現することが可能な決済手段なのである。

少し強引な言い方かもしれないがQRコードでの決済は「直接決済」。クレジットカードの決済は「間接決済」と位置付けることが出来る。

QRコードを活用すれば、摩擦係数が極限にまで低下し、マイクロファイナンスと呼ばれる極めて少額の決済でもコスト面で難なく対応できてしまうのもお判り頂けると思う。

数年後にはクレジットカードが完全に不要となりクレジットカード自体が化石化してしまうような社会が到来するかもしれない。それほどの社会変革をもたらす可能性をQRコード決済は秘めているのである。

 

  • アリペイとWeChatPayは既に主戦場を海外へ移している。いよいよ日本にも日本人向けに本格上陸を発表。

Lawson alipay

この二つの企業は中国でのマーケットを既に制覇し、次は海外マーケットにターゲットを移し、海外進出の勢いを加速させている。

実は、アリペイは中国人観光客向けに限定する形で、既に日本へ上陸している。各地の空港などでアリペイの掲示を見かける機会も多くなっている。さらに、アリペイは2017年8月に2018年から日本人をユーザーとして対象とする形で、本格的な日本進出を発表した。今後の3年間で1000万人のユーザーを獲得する戦略だと言う。果たして日本にQRコードを用いたスマホ決済が根付くかたいへん興味深い。

アリペイが日本でどのような戦略を行うのか、他国の進出事例を参考にして少し考えてみたい。インドでは、アリペイを運営するアントフィナンシャルの提携先であるインドのEコマース大手のPaytmがアントフィナンシャルを共同でPaytm Payment Bankという新銀行を設立した。マレーシアでは、アントフィナンシャルがマレーシア第2位の銀行であるCIMB銀行の子会社Touch’goとの提携を発表し今後の行方が注目されている。

参考記事:【キャッシュレス社会の衝撃】 Paytmがインドのキャッシュレス社会の実現を加速!

【キャッシュレス社会の衝撃】アリペイ(アントフィナンシャル)のマレーシア展開 CIMBの子会社Touch ‘n Goがアリペイと提携|マレーシア

 

  • アントフィナンシャルが日本では銀行を買収するのではないか?

以上のケースを踏まえると、アントフィナンシャルは、まずは日本で提携先を模索することは間違いない。

次にどうしても行わなければならないのが、金融機関としてのライセンス取得であろう。アリペイを普及させるには、銀行口座からの引き落としを自由に行えるようにする必要があり、そのためには、銀行間ネットワークシステム「全国銀行データ通信システム(全銀システム)への加入は必須となるはずだからである。加入するには、銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、農業協同組合の肩書きが必要であるはずだ。

手取り早くアリペイを普及させるには、アリペイの運営会社であるアントフィナンシャルが、日系金融機関を買収してしまうことが話が早い。しかし、日本の金融当局がそれを簡単に許すだろうか。

今後、アントフィナンシャルが、どのような戦略で日本の銀行業の免許を取得していくのか最大の注目点として見守っていきたいと思う。何れにせよ今回の、杭州、深セン訪問で、複数の関係者と会談を持つことができ、アリペイとWeChatPayが世界制覇を真剣に考え、他国のマーケットについて深く洞察し、海外進出を迅速に行うための研究を進めている点はよく理解できた。日本ではアリペイの名称を使用せず別名称を使用した方が進出が進むとするアイデアも、彼らの研究によるものだ。

今後もGlotechtrend(グロテックトレンド)としては、さらに力を入れてキャッシュレス社会化のトレンドを追いかけていく予定である。