【アリババニューリテール戦略の全貌】第5回:「HomeTimes家時代」という体験型百貨店をオープン、リアル店舗とEコマースが調和して助け合う驚愕の仕組みとは?

アリババがまたしても「ニューリテール戦略」を体現する百貨店をオープンした。「Home Times 家時代」は、理想的な新しい小売業の姿を我々に提示するものなのかもしれない。O2O店舗+物流+ビッグデータ解析+VR遊び心。中国ではリアル店舗とEコマースが共存できる可能性を秘めた「ニューリテール戦略」がにわかに人々の関心の中心になりつつある。

 

  • 次々と発表される「ニューリテール戦略」を体現する店舗。もう中国では「ニューリテール」が当たり前になりつつある。

ジャック・マーの「ニューリテール」コンセプト発表から約9ヶ月。これほどのスピードで「ニューリテール戦略」を前面に打ち出す店舗が次々と発表されると誰が思っていただろうか。

スーパーマーケットである「盒馬鲜生(ファーマーションシェン)」、カーディーラーである「車の自動販売機」、ショッピングモールである「More Mall(猫茂)」、コンビニである「Tmallスマートコンビニ」と、次々とニューリテール戦略に基づいた具体的店舗が発表されたが、次は「HomeTimes 家時代」という名の百貨店だ。

「ニューリテール戦略」は、中国では衝撃と感動によって迎えられじわりじわりと市民権を獲得しつつある。

まだ日本ではアリババの「ニューリテール戦略」について詳しく報道しているメディアは少ないように思う。GlotechTrends(グローバルテクノロジートレンド)としては「ニューリテール戦略」を日本でも検討してほしいとの思いから速報レポートを届ける。こんな店舗があれば、日本の百貨店にも人手が戻るのかもしれない。テクノロジーの部分に焦点を当てて「HomeTimes 家時代」のコンセプトをお伝えしていきたい。

 

  • 「ニューリテール戦略」第1のポイントはO2Oの実現。 オンラインとオフラインを直結

「HomeTimes 家時代」には、遊び心が溢れている。VRを活用した子供のプレイグランドが配備されているのは、今の時代もはや当たり前となりつつあるが、この店舗では入店する各店舗が商品販売をサポートするツールとしてVRテクノロジーを活用している。

hometimes products

例えば、衣類を販売する店舗では、VRを活用したバーチャル試着室が用意されており、様々な服を自分のバーチャル映像と融合させながら試着ができる。店舗は基本的な在庫を揃えておけば、細かな色や細かいデザインの変更に対応した在庫を用意しておく必要はなくなる。ユーザーはVR試着室で気に入ったものがあれば、店舗のスクリーンもしくは自分のスマホを活用してその場でオンライン注文が可能である。ちなみに、ここでもアリペイによりキャッシュレス決済が用いられることになる。

hometimes guide screen

オンラインでの注文は、店舗の価格とオンライン価格が一致するように調整されている。その秘密は、商品につけられたQRコードで認証するETagというものである。このETagを通じてオンラインとオフラインの価格をリアルタイムに調整し反映されるようになっているのである。

hometimes e-tag

リアルタイム同一価格の仕組みを実現することによって、従来の百貨店(特にブランド品)で発生していたリアル店舗で試着をして自宅に戻ってオンラインで別の店舗で購入するという価格差の大問題を解消できることになる。

また家具や照明といった自宅に備えつける備品の場合にも、あらかじめ撮影した自宅の部屋の写真を持込めばVRで作られた家具をその写真にはめ込み自宅に調和するか視覚で確認することができる。カーテンの色調整なども朝飯前だ。

このように「HomeTimes 家時代」では色々な商品をリアルもしくはVRで体感しながら、最終的にオフラインとオンラインをユーザーが選択して購入できる仕組みになっている。価格は、オンラインとオフラインが同一価格になるようにアリババがプラットホームを提供してサプライチェーンをサポートしている。

 

  • 「ニューリテール戦略」第2のポイントはロジスティックの融合

リアル店舗でオンライン購入することのロジスティック面の利点は大きく分けて2つある。

第一に、ユーザー側の利点。当然であるが、購入したものを自分で自宅に持ち運ぶ手間から解放される。百貨店で購入する商品で、その日のうちに必要なものなどごく一部であるはずだ。ユーザーの多くは、配送できるなら送ってほしいと思っているはずである。

hometimes o2o shopping

第二に、店舗側の利点である。店舗は、通常は百貨店内の店舗やバックヤードに大量の在庫を抱えている。従来の百貨店の場合は、在庫切れの場合は販売チャンスを逃すことに等しい。靴のサイズを聞いたお客さんに対して、在庫切れを伝えた場合、また来店すると言うお客さんが本当に来店することはまずない。従って、大量の在庫を抱える必要があるが、在庫はリスクであり、資金の効率化を妨げることとなる。購買衝動が盛り上がっているうちに、その場でオンライン購入してもらう事が可能であれば、店舗側としては販売チャンスを逃すことが少なくなるだろう。

そして「ニューリテール戦略」ではオンライン注文の場合は、店舗を介在せず仕入先からエンドユーザーへ直送するロジスティック設計となっている。ユーザーは、商品を早期に受取ることができると言う利点があり、店舗側も配送手続きの手間から解放され会計処理するだけで利益が計上できる。これも、アリババが提供する「ニューリテール戦略」のプラットホームによって実現されており、言わばBtoBtoC(仕入れ先—店舗—エンドユーザー)のビジネスモデルを実現させている。

 

  • 「ニューリテール戦略」第3のポイントはアリババクラウドが行うビッグデータ解析

アリババには、クラウド事業を行うアリババクラウドという事業がある。ビッグデータを蓄積しその解析を行うのである。実は、先月発表されたアリババの4-6月期の四半期決算でもこの事業の存在感が増しているのが確認できる。どうやら、アリババの「ニューリテール戦略」でもアリババのクラウド事業が大きな鍵を握っているようだ。

最初に「HomeTimes 家時代」周辺住民の属性をビッグデータ解析することによって、周辺住民の属性、住民の消費性向、資産状況などを把握してしまう。次に、アリババが提供するオンラインショッピングでの履歴情報などの解析結果と照らし合わせて、どのような商品が売れ筋なのか、どのような商品が流行する気配があるのかなどを解析し、適切な商品を最適な在庫数だけ店舗に配置させる。

さらに、実際の来店客の動向のデータを分析しそれを加味しながら、リアルタイムでビッグデータを分析し、最適な商品アイテム、陳列状況などを決定していくことを可能とする。まとめと「ニューリテール戦略」は苦境に立たされているリアル店舗を救えるのか?

 

  • 「HomeTimes 家時代」のニューリテール戦略のポイントは以下であった。

1、オフライン店舗でオンライン注文を可能にし、その価格差を同一にする。決済はもちろんアリペイによるキャシュレス決済。

2、物流負担を軽減 ユーザー:購入商品を自宅まで持ち運ぶことから解放。店舗:仕入先からエンドユーザーへ直送することで物流作業負担を軽減。

3、ビッグデータに基づく顧客分析から適切な商品、配置選択を実現。

4、最新のテクノロジーを用いることで遊び心を加えて楽しみながらリアル店舗での買い物を実現。

さて、今回の「HomeTimes 家時代」のベースとなった百貨店は、銀泰(Intime)という百貨店である。実は、アリババは、2017年1月に百貨店チェーンの銀泰商業集団(インタイム・リテール・グループ)の株式を取得し筆頭株主となっている。アリババは、この銀泰百貨店をモデルケースとして活用して、「ニューリテール戦略」が果たしてどこまで実現できるかを実験していくことになる。是非また続報をお届けしたい。

アリババという会社は、プラットホームの構築に長けた会社であるが、百貨店の運営そのものには興味はないと思われる。それは、過去のアリババの実績と創立者であるジャック・マーの言葉からも読み取れる。アリババの本当の狙いは、銀泰百貨店から「ニューリテール戦略」の成功モデルを構築し、その後に他の百貨店に同様のプラットホームを提供し、プラットホーマーとしてビジネスを拡大していくことだと思われる。

銀泰商業集団の創業者である李超(li Chao)は、「変化は苦痛を伴うが、変化しないほうがより苦痛を伴う。」とコメントし、今こそ従来のリアル店舗をニューリテール戦略により新しい業態へと進めるべきだと語気を強めている。

現在、世界の色々な国でリアル店舗が苦戦している。とりわけ、日本やアメリカを含めて先進国の多くは、Eコマースの爆発的な拡大の前にリアル店舗が大打撃を受けている。先日のアメリカのトイザらスのチャプターイレブンの申請はAmazon台頭を示す象徴的な出来事の一つである。

ネット店舗とリアル店舗の双方が共存できるような仕組みがあるならば、それが理想的であるのかもしれない。「ニューリテール戦略」は、そんな試みへの第一歩となる。いずれにせよ、Eコマースの巨人であるアリババが、リアル店舗の領域へ足を踏み入れ双方が共存できるような仕組みを考えていることは大変興味深い。

参考記事:

【アリババニューリテール戦略の全貌】第1回:オンラインとオフラインの融合、これぞ新しい小売「O2Oの最先端」だ。

【アリババニューリテール戦略の全貌】第2回:新しいショッピングモール「More Mall(猫茂)」2018年4月開業

【アリババニューリテール戦略の全貌】第3回:盒馬鲜生(ファーマーションシェン)は4つの複合体O2Oスーパーマーケット|アリババ

【アリババニューリテール戦略の全貌】第4回:アリババが10月に車の自動販売機業務を開始、芝麻信用750スコアのユーザー対しその場で即日車を引き渡し|アリペイ

 

今後もGlotechTrends(グローバルテクノロジートレンド)としては、「ニューリテール戦略」の続報を今後も皆様にお届けするつもりである。