【アリババニューリテール戦略の全貌】最終回 ニューリテール戦略の狙いとは?中間まとめ

ニューリテール戦略は、現在進行形で中国の伝統的なリテール産業のアップデートを試みている。その奥行きは想像しているよりもはるかに広く、数年後のショッピングのシーンを激変させる可能性を秘めている。ニューリテール戦略とは?その真の狙いとは?現時点での中間的総括をしてみたい。

 

2018年5月末時点 ニューリテール戦略プレイヤー群雄割拠図!

当サイト(GloTechTrends)としては、ニューリテール戦略を人々の消費シーンを変える大イベントと認識しコンセプト発表当初からニューリテールに関する数多くの関連記事をレポートしてきたつもりである。

ニューリテール戦略とは、2016年末のアリババのテクノロジーの祭典である雲栖大会(云栖大会)で、アリババ創業者であるジャック・マーが自ら提唱したコンセプトである。2017年からはニューリテール戦略を導入した店舗が怒涛の勢いでオープンし、現在では中国でニューリテールブームが起き、多くの投資資金がニューリテール分野に集中している。

2017年後半にはアリババがリードするニューリテール分野に、後発であるテンセント陣営(京東含む)が参入し、瞬く間にアリババ陣営VSテンセント陣営(アリババに対抗する陣営)という激戦の構図が形成された。

下記の表は、当サイトが2018年5月末時点でのニューリテール分野での激戦の様子をアリババ陣営とテンセント陣営に分けて業界マッピングしたものである。この表からお分かり頂けるように、もはやニューリテールは一部の分野に限ったムーブメントではなく、生鮮食品、スーパーマーケット、コンビニ、家電、生活用品、デリバリーサービスなどのあらゆる分野に拡大し、両雄が激突している構図がお分かりいただけるであろう。今後もますます両雄の戦いが熾烈になっていくことは間違いないであろう。

 

ニューリテールとは何なのか?①OMO()

当初ニューリテール戦略と言えば「O2O(Online to Offline)」という説明がなされていた。オンラインを活用しながらオフラインを活性化していくと言う従来のO2O戦略の延長線上にあるものだと思われていた。

 しかし、いくつかの実店舗がオープンされた後に、誰もがニューリテールの奥行きの深さに驚かれることになりOMOという中国発となる新しい単語が生まれたのである。OMOとはOnline Merger Offilineの略でありオンラインとオフラインの統合を意味する。人々は店舗を訪問し、その場で購入し商品を受け取ることもできるし、オンラインへ移行し自宅へデリバリーすることが可能なのである。一度店舗を訪問したユーザーは、次からは自宅からオンライン注文するようになる。実際に目で見て商品鮮度や店舗の清潔さを確認しているのだから通常のオンライン注文と異なり安心感は大きい。

②人工知能やビッグデータ解析による業務効率化!

アリババのニューリテール戦略の究極的な目標は、在庫を極限まで削減し店舗運営の効率化を実現し倉庫を排除することである。これを実現するために鍵を握るのは、アリクラウドに蓄積された膨大なビッグデータである。アリクラウドには、アリババ経済圏から獲得された膨大なビッグデータが蓄積されており、これらのデータを人工知能による解析テクノロジーを活用することで、ユーザーの消費動向についてより深く理解できるのである。

ミクロ経済学でいうところの「予算制約に基づく効用の最大化」というテキスト上のコンセプトを、ビッグデータ解析と人工知能などのテクノロジーを活用することで、現実の社会に精度高く応用することに成功したのである。これにより、店舗運営者は無駄な在庫リスクを抱えることなく、テクノロジーに依存しながら効率の良い経営を実現することが可能となったのである。

③ニューリテール戦略=買い物のエンターテイメント化!

ここでジャック・マーの信念を示す言葉をご紹介したい。「人類には2つの最終目的がありそれは二つのHに集約される。(2H戦略)2つのHとはHealth=健康とHappy=幸福、単に仕事をするだけでなく、人類は健康で幸福であることが大切である。」というのである。

2H戦略というのは、アリババの経営戦略を語る上でその根幹に横たわっている。Healthという点においては、昨今アリババがアリヘルスなどの健康事業に注力し、巨額の赤字を出しながらもビジネス拡大を狙っている点からも明らかである。Happyという点でもアリババは昨今エンターテイメント分野の拡充し、同様に赤字を計上する中、事業拡大に注力している。

実は、ニューリテール戦略もHappy(幸福)との関連を意図して作られたものなのである。アリババが展開するニューリテール戦略には、店舗の至る所に遊び心が溢れている。例えば「盒馬鲜生」(ファーマーションシェン)において生きたロブスターを買い物しながら、その場で家族と和気藹々の中、出来立て料理を楽しむことができたり、スポーツ用品店のINTERSPORTでロボットバーテンダーがお客さんの選んだスポーツ用品をイメージしながらカクテルを作ってくれたり、随所に散りばめられたARゲームなどもお客さんに買い物を超越したエンタメ空間を楽しんでもらいたいという意図なのである。

アリババのニューリテール戦略は、買い物を単なる買い物で終わらせるのではなく、この空間にいるだけで楽しいなと思わせる仕組みが備わっているエンターテイメント空間なのである。この部分は、同様にニューリテール戦略を展開する競業他社のニューリテール戦略においてはあまり目立たない要素とも言えるかもしれない。

以上のようにGloTechTrendsとしてのニューリテール戦略の中間的まとめを試みてみた。

キーファクターは以下の3点である。①OMO(オンラインとオフラインの統合)、②人工知能やビッグデータなどのテクノロジーを活用した「予算制約に基づく効用の最大化」③買い物にエンターテイメントを加えることで、買い物を楽しくする遊び心。以上の3つがバランスよく保たれたニューリテール戦略モデルはユーザーからの高い注目を集めていると言えるであろう。

今後もニューリテール戦略が発展していくのは間違いないであろう。ひとまず【アリババニューリテール戦略の全貌】シリーズを終了し中間のまとめとしたい。

【アリババニューリテール戦略の全貌】第1回:オンラインとオフラインの融合、これぞ新しい小売「O2Oの最先端」だ。

【アリババニューリテール戦略の全貌】第2回:新しいショッピングモール「More Mall(猫茂)」2018年4月開業

【アリババニューリテール戦略の全貌】第3回:盒馬鲜生(ファーマーションシェン)は4つの複合体O2Oスーパーマーケット|アリババ

【アリババニューリテール戦略の全貌】第4回:アリババが10月に車の自動販売機業務を開始、芝麻信用750スコアのユーザー対しその場で即日車を引き渡し|アリペイ

【アリババニューリテール戦略の全貌】第5回:「HomeTimes家時代」という体験型百貨店をオープン、リアル店舗とEコマースが調和して助け合う驚愕の仕組みとは?

【アリババニューリテール戦略の全貌】第6回:盒馬鲜生(ファーマーションシェン)5都市10店舗新規同時オープン、予想以上のスピードで急成長

【アリババニューリテール戦略の全貌】第7回 アントフィナンシャルが「アリペイ未来ドラッグストア」をオープン!

【アリババニューリテール戦略の全貌】第8回 スイス「INTERSPORT」が北京でニューリテール「夢幻の店」を開業!

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