シェアファクトリー的な未来型の製造業構築へ、アリババが「ニューマニュファクチャー(製造業)」のコンセプトを発表

アリババは、「ニューリテール戦略」で小売店改革を推し進めている最中だが、新たに製造業の改革を進めるようだ。「ニューマニュファクチャー」と名付けられた戦略には、新しい製造業の姿が凝縮されている。「カスタマイゼーション」と「パーソナライゼーション」がキーワードとなり柔軟性のある製造業の仕組みのようだ。

 

  • 小売業の改革「ニューリテール戦略」と製造業の改革「ニューマニュファクチャー」を同時進行。

アリババのジャック・マーは9月10日に行われた2017世界IOT無錫峰会において、「ニューマニュファクチャー」という新しい戦略的コンセプトを打ち出した。打ち出したと言っても、実はその全貌はまだ明らかにされていない。具体的な戦略の内容は、今後の発表を待つしかない。ただし、ジャック・マーのコメントからは、「カスタマイゼーション」と「パーソナライゼーション」という2つの言葉をキーワードとしている節が読み取れる。コンピュータを利用した柔軟な製造システムで特注品などの製造を可能としたり、個々のエンドユーザーを意識したカスタマイズに対応できるなど、エンドユーザーからの依頼をファクトリーが柔軟に対応できる新しいC2B的な製造業のあり方を実現する狙いのようだ。

忘れてはならないのは現在進行中の「ニューリテール」戦略の展開スピードである。アリババは、2016年末に「ニューリテール戦略」のコンセプトを発表してから、わずか数ヶ月の間で、具体的な戦略を次々と発表し一部は既に店舗で実行されている。今回は発表された「ニューマニュファクチャー」戦略も、相当なスピード感で推し進められる可能性が極めて高い。少なくともジャック・マーの頭の中には既に具体的なイメージが既に存在しているのは間違いない。

参考記事:

アリババ「ニューリテール戦略の全貌」:

【アリババニューリテール戦略の全貌】第1回:オンラインとオフラインの融合、これぞ新しい小売「O2Oの最先端」だ。

【アリババニューリテール戦略の全貌】第2回:新しいショッピングモール「More Mall(猫茂)」2018年4月開業

【アリババニューリテール戦略の全貌】第3回:盒馬鲜生(ファーマーションシェン)は4つの複合体O2Oスーパーマーケット|アリババ

【アリババニューリテール戦略の全貌】第4回:アリババが10月に車の自動販売機業務を開始、芝麻信用750スコアのユーザー対しその場で即日車を引き渡し|アリペイ

 

  •  深センにあるシェアファクトリー(Mould Lao众創空間)のビジネスモデルとは。「カスタマイゼーション」と「パーソナライゼーション」で、柔軟な製造業の姿を実現。

実は、中国でシェアファクトリーという新しいビジネスモデルが一部の工業地域で進められている。どうやら現段階の情報から推測すると、このシェアファクトリーのビジネスモデルがアリババの推し進める「ニューマニュファクチャー」戦略のコンセプトとして類似している可能性が高い。そこで、参考とするためにシェアファクトリーのビジネスモデルを整理しておきたい。

深センの宝安市の一角に中小工業がひしめく一帯がある。この場所に現在好評のシェアファクトリーが運営されている。この地区は中小の企業経営者や法人登記前のスタートアップ予備軍がひしめく地区である。シェアファクトリーは、新しい柔軟な製造業の姿として「カスタマイゼーション」と「パーソナライゼーション」の実現を達成する仕組みを目指している。

このシェアファクトリーでは、大きな機械設備から従業員までありとあらゆる経営資源が登録企業の間でシェアされる前提で成立している。既に18企業と会社登記前段階の12のスタートアップ企業の30団体が登録し一つの工場をシェアして使用している。

具体的に何がシェアできるのかを下記に示すことにする。

1、工場のスペース

シェアファクトリーの運営企業であるMould Lao众創空間に対して、使用料という形で使用に応じてテナント代を支払うことになる。

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2、製造設備、製造機械

Eタグによって使用した設備を自動計測し、使用した分だけ時間単位で支払う。

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3、従業員、スタッフ

(シェアファクトリーに在籍する人々は全てが自分の労働単価を保有している。技術のレベルや能力に応じて時給が異なる。必要な人材を必要な時間だけ雇用し時給単位で報酬を支払う。

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4、顧客からの注文

 例えば、在籍するメンバーが顧客から注文を獲得したが、製造コストに見合う最低限の数量を製造できない時に、他のメンバーと共同で最低数量を達成し共同で製造作業を行いコスト削減を行う。

5、会計士、法律関係、知的財産などのプロフェッショナル

必要なプロフェッショナルと必要な時に依頼。

6, ビジネスアイデアの知識を共有

7、スタートアップなどブランド価値が低い段階で、ブランドをシェアする

上記のように、シェアファクトリーでは、工場の製造設備や労働力などの経営資源をシェアすることによって、効率的に少量生産を可能とし「カスタマイゼーション」と「パーソナライゼーション」の実現を達成し、柔軟な製造業のあり方を実現している。

シェアファクトリーで、働くスタッフからも、従来の雇用や会社という概念とは、全く異なる柔軟な労働環境の中で仕事ができると好評のようである。

このシェアファクトリー運営会社であるMould Lao众創空間のCEOである汪強は、通常、製造業を起業する場合には、まず最初に工場用地を取得しさらに設備投資や従業員を雇用するなど、初期投資が膨大となる。スタートアップ段階では融資してくれる金融機関も少なく、創業のハードルが極めて高い割に、起業リスクが最も高い分野となっている。

近年は中国の原材料価格、人件費、設備投資金額が高騰しスタートアップが参入するには、困難な分野となっており中国政府としても製造業の衰退を憂うような状況となっている。

こうしたシェアファクトリーを活用することいよって、優秀な若者がリスクを軽減させながら、自らのアイデアを少量生産から容易に実現することが可能となる、製造業を起業しやすい環境が整備されることになるわけである。

効率的に少量生産を可能とし「カスタマイゼーション」と「パーソナライゼーション」の実現を達成というシェアファクトリーのコンセプトは、おそらくアリババの「ニューマニュファクチャー」戦略でも採用されることになるであろう。

 

  • ジャック・マーは、ビッグデータが最も重要な経営資源。今後はインターネットとファクトリーとの融合が不可欠。

最後に、ジャック・マーが「ニューマニュファクチャー」戦略の発表の際に話した内容を要約して以下に記載しておきたい。

Jack ma iot speech

「Eコマースが登場した時に、誰が現在の小売店の苦難の状況を想像できただろうか。現在では、人々はネットで買い物をする事が、ごく当たり前の日常習慣となり、リアル店舗は大変苦戦している。おそらく現在の製造業も、10年後には現在のリアル店舗と同じような苦戦を強いられているだろう。いや、もっとより困難な苦境に陥っている可能性が高い。」

「以前のテクノロジー革命は、石炭や石油、電気といったものが産業革命の源泉となったが、現在の産業革命の源泉は、紛れもなくビッグデータである。クラウドに集積されたデータ、人工知能によるデータ解析などが生産性を高めるために不可欠の要素となっているのである。」

「製造業もインターネットと融合しビッグデータを活用しなければ未来はない。」一方で、「インターネットも、製造業と融合しなければ未来はない」製造業とインターネットの双方が融合しなければならない。それが「ニューマニュファクチャー」戦略である。」

「製造業は、もはやMade in USAやMade in Chinaが表示されるのではなく、「Made in INTERNET」と表示する時代に突入するかもしれない。未来の製造業の本質は、製造業ではなくサービス業となる。製造業が最大の雇用を生み出すという時代はもうとっくに過ぎ去った。新しい時代の準備をしなければならない。」

 

GlotechTrends(グローバルテクノロジートレンド)としては、現在継続してウォッチしている「ニューリテール」戦略に加えて、この「ニューマニュファクチャー」戦略についても注目度の高い項目としてウォッチしていくことにしたい。今後「ニューマニュファクチャー」戦略に関する全貌をお届けしていく予定である。