アリババ主催ビジネスコンテストCreate@で躍動した日本のスタートアップ ②AIによる音声感情解析分野の実力派!Empath (東京)

Empathは渋谷を拠点とするAIによる音声感情解析を手がけるスタートアップ。設立からわずか一年間で、世界50ヶ国1,000社以上で、既にプロダクト導入実績を有する実力派AI企業である。国際ピッチコンペティションでも受賞歴が5つありグローバルでの存在感も高い。

 

グローバル経験豊かなEmpathが中国大陸でのピッチコンペティションに初参戦!

杭州は中国2大IT企業の一角であるアリババの本社が位置する街である。11/14-15、アリババクラウド主催のグローバルピッチコンペティションであるCreate@ファイナルがアリババ杭州本社近くの国際会議会場で開催され、決勝まで勝ち進んだスタートアップ53社が白熱したピッチを展開した。

(撮影GloTechTrends) 

Create@とは、アリババクラウドが主催する中国最大規模とも称されるグローバルスタートアップビジネスコンテストである。4回目となった2018年大会には世界40都市以上で予選が開催され3000社以上のスタートアップ企業が参加し過去最大規模となった。

Empathは一次予選となったCreate@東京を1位で通過し、蘇州で開催された中国企業との二次予選でも1位通過と圧倒的な成績で決勝まで進んだ。実は、Empathは2018年5月にルクセンブルクで開催されたヨーロッパ最大規模と言われる「ICT SPRING 2018」や同じく5月にシンガポールで開催されたアジア最大級のカンファレンス「Tech in Asia Singapore 2018」など5大会で優勝を勝ち取るなど、グローバルな舞台での経験値も高くその実力は高く評価されている。海外経験値の高いEmpathにとっても、中国大陸でのピッチコンテストは今回のCreate@が初めてとなったようだ。

(撮影GloTechTrends) 

 

内容が凝縮された10分ピッチを展開し会場は受賞ムードへ!

Empathは全体の9番目にステージに登場した。時間は質疑応答を含め10分間のピッチである。ピッチを展開するのは、アルゴリズム開発を手がけるデータアナリスト赤岡パディシ沙羅さんとCSOとして海外戦略なども統括する山崎はずむ氏である。

(撮影GloTechTrends) 

まず、最初に山崎はずむ氏からAIを活用した「感情解析」(Vocal Emotion AI)の市場規模やAIスピーカーを活用した音声認証の重要性などが語られた。次に、赤岡パディシ沙羅氏から感情解析プロダクト「Empath SDK and API」の説明がなされ、このプロダクトを活用するとユーザーの喜怒哀楽という4つの感情をAIにより可視化することが実現できてしまうという。「Empath SDK and API」は、既に世界50カ国、1000ユーザーに対して採用されており、驚くことに約定率を20%向上するという目に見えた成果に結びつけているという。中国において人工知能系スタートアップは、基礎研究だけでなく実際に産業に活用されビジネスモデルとして如何に展開されているかが重要な評価ポイントとされるが、ここでもかなりの好印象を獲得したようだ。

(撮影GloTechTrends) 

持ち時間の10分間で、ビジネスモデル、中国市場の魅力、直近のファイナンスで300万ドル(日本円で3億2000万円程)の資金調達に成功したこと、国際ピッチコンテストでの5つの受賞歴、ジャッジからの質問ひとつと、筋肉質で調和の取れた見事なピッチを展開し、終了時には会場一体となって拍手も沸き起こり、会場は受賞ムードが広がった。

Create@ファイナルの感想について聞かせてください。 開会直後のEmpath赤岡氏、山崎氏のインタビュー!

残念ながらCreate@ファイナルは中国企業がトップ3を独占する結果となり、海外勢にはかなり厳しい結果となってしまった。英語でピッチを展開する海外勢にはやや厳しい環境だったのかもしれない。表彰式直後に見事なピッチを展開してくれたEmpath赤岡パディシ沙羅氏、山崎はずむ氏にお話を聞く機会を頂戴したので要約して掲載したい。

(聞き手)

お疲れ様でした。Empathさんは、ヨーロッパ、ドバイ、シンガポールなど多くのピッチコンペティションで輝かしい優勝歴がありますが、他国と比較してCreate@ファイナルの印象は如何だったでしょうか?

 (山崎氏)

バイリンガルイベントを行うのは東アジアでは結構難しいという印象をもっています。実は、これはここ中国だけでなくて日本にも共通していえることで、例えば、先日日本で開催されたTech in Asiaは、グローバル参加者は英語でピッチ、日本の参加者は日本語でピッチを展開し、審査員もほぼ日本人という構成だった。これだとグローバルイベントとしては結構きついんです。逆にSlush Tokyoのように最初から全て英語で行う決めてしまうと、参加企業がほとんど海外からのグローバル企業になってしまい、結果として実はまだ日本企業が優勝できていないという結果になってしまう。

ここCreate@でも、バイリンガルイベント構成で中国系企業はほとんどが中国語でピッチ、海外勢は英語、審査員は中国人という構成で、こうなると海外勢は少し厳しい結果になることは覚悟しておくことが必要かもしれない。もちろん、国内のスタートアップを育成していくことは大事だと思うので、そこに対して我々に不満があるというわけではない。(*結果として過去4大会において、外国企業は優勝できていない。)

ただ、こういう厳しい環境の中でも蘇州の二次予選では沙羅さんが頑張ってくれて1位を獲得できたし、ファイナルでも他者に負けない手応えあるピッチを展開できたと思ってるし我々にとって大きな自信に繋がった。Create@の僕らのピッチが、少しでも聞いてくれたジャッジの印象に残ってくれたらなら来た甲斐があったと思っています。

(聞き手)

今回のCreate@が契機となってEmpathさんが今後中国でビジネス展開する可能性はあるのでしょうか?

(山崎氏)

東アジアのマーケットは、ドメスティックな部分も多いので、スタートアップの我々にとっては、コストを割いて敢えてそこに参入していくのが良いのかはしっかり検討していく必要がある。中国のマーケットは巨大であり魅力的ではあり音声認証の分野でもアメリカに次ぐ2位を占めているのは理解している。しかし、いきなりスタートアップが参入するとなると、よほど中国に対して優先順位を上げてビジネス展開していく事が必要となる。我々としては、まだ進行中の課題もあるので、優先順位をつけながら検討していくことになる。

ただ、今回のピッチで中国企業が関心を持ってくれて話しを展開する機会があれば、我々はそれに対しては全くオープンであるし、中国企業ともマーケットの可能性や人工知能の技術的な側面についても意見交換もしてみたいと思っている。

(聞き手)

アルゴリズム開発を行っている沙羅さんに聞きたいのですが、もし中国で御社の製品を販売するとしたら、日本で開発された人工知能アルゴリズムで走る既存商品を中国でそのまま導入できるものなのでしょうか?解析対象の音声データの抽出も含めてローカライズが必要となるのでしょうか?

(沙羅さん)

単一の共通したアルゴリズムでグローバル展開するのは難しいと思います。日本で使っているアルゴリズムをそのまま中国で使用するのであれば、それは日本人にとってどうやって聞こえるかという判断になってしまう。もし本格的に中国にプロダクト導入するなら、中国人の音声データを集めてそれをチューンナップするのが本来は正しいやり方だと思います。それには当然コストもかかるので、当社にとって中国に参入する価値があるかを検討しながら考えていくことになる。中国マーケットに限らず一つの海外市場で販売を拡大しようとアクセル踏むには、アルゴリズムのローカライズ作業は必要になると考えています。

(聞き手) 御社は音声を活用したAI感情解析を得意としていますが、人工知能を活用した他分野の展開についてはどのようにお考えでしょうか?

(山崎氏)

音声以外の要素を複合的に組み合わせて総合アルゴリムを開発し展開することもありうるが、我々はスタートアップなのでまずは音声を活用したAI解析の分野を深く掘り下げて実績を積み上げていくことが大事だと思っている。音声を使って何が実現可能かをしっかり考えながら研究開発をすすめ、近い将来実現すると言われているVコマース(音声でEコマースが実現)領域などにしっかりとビジネス展開していくことが大事だと思っている。統合アルゴリズムを作る手前の段階で音声認証技術をしっかりと積み上げ実績を残していくことにまずは注力していくことが、スタートアップとして今我々のやるべき使命だと考えています。統合アルゴリズムへの応用は何年か先に実現することになると思います。

人工知能解析する上で、日本におけるデータ抽出作業環境についてお聞かせください。

日本でのレギュレーションはかなり厳しいが、それについては、当社はある意味当たり前のことかなと思っている。実は杭州に来る前にヨーロッパに滞在し、データサイエンティストと様々なディスカッションをして来たが、GDPR(EU一般データ保護規則)によってデータ運用が厳格化される方向に動いて来ている。データの匿名化処理を施した後で、個人情報を特定しない形でデータを活用する動きが広がっている。今後、そうした流れが世界基準になっていくトレンドであるなら、今からそこをちゃんと対応していったほうが、将来的にはビジネスの可能性が広がるのではないだろうか。

(聞き手)

非常に明快なメッセージをたくさん頂きありがとうございました。Empathさんのような明快な思考を持った日本の人工知能関連スタートアップと中国の有望な人工知能スタートアップが交流や親睦を深めることで、現場レベルでもっと両国は相互理解を深めていけるのかなと思っています。是非また別の機会を設定させてください。本日はお疲れのところありがとうございました。

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