「アリババとアントフィナンシャルの資本関係」まとめ アリババがアントフィナンシャル株式33%取得へ!

2月1日アリババの決算発表と同時にアントフィナンシャル株式の33%取得が発表された。これで両社の複雑な関係が整理されアントフィナンシャルが上場に向けて本格的に動き出す可能性が高い。一度、両社の複雑な関係を簡単にまとめておきたい。

2月1日アリババ決算発表 アリババがアントフィナンシャル株式33%の新株取得を発表。

2月1日に発表されたアリババの決算は、通期売上見通しを上方修正するなど好調な業績を印象つけるものとなった。それと同時にアントフィナンシャルから33%の新株発行を引き受けることが発表された。新株の対価としてアリババが保有する特許などの知的財産権譲渡による現物出資、及び毎年アントフィナンシャルの税引前利益の37.5%をアリババに支払うという合意を放棄することが発表された。

アントフィナンシャルは、アリババグループの決済である「アリペイ」や信用格付けである「芝麻信用」を運営するアリババの金融部門の中核企業である。2004年にアリペイとして業務を開始し2014年10月に現在のアントフィナンシャルへリブランディングされている。当社が頻繁に引用する中国のユニコーン企業のランキングを紹介するサイト「Chian Money Network」でも堂々の1位にランクされた巨大ユニコーン企業である。

Chian Money Networkに掲載されている増資前バリュエーションでも既に70ビリオンUSDと試算されており33%と仮定しても23ビリオンUSD(2兆5000億円程度)の資産をアリババは手に入れることになる。増資分を加味すればアントフィナンシャルの企業価値の上方修正は必須である。

しかし、翌日2/2日のアリババの株価はネガティブに反応しそれ以降も継続的に下落、2月5日NYSEの終値ベースで180.53ドルとなっており発表時点からおよそ1割下落したこととなる。本件の発表がネガティブに受け取られたのか、全体相場の下落トレンドの影響なのか要因は定かではない。

アリババ Stock Chart(Yahoo financeより)

アリババとアントフィナンシャルの歴史

まず、ご覧いただきたいのはアリババとアントフィンシャルの両者の株主構成図である。アリババがアントフィナンシャル株式33%を保有する以前の株主構成である。

 アリババがアントの株33%を保有する以前の関係図(GlotechTrends作成)

もともとアントフィナンシャルは、アリババの決済部門を担いアリババの子会社として2004年に業務を開始している。アリペイという企業名でアリババとアリペイは非常に密接な資本関係で発展を遂げていたのである。

それが、2011年初頭にアリペイが中国人民銀行から決済ビジネスの正規ライセンスを取得するにあたり資本構成を中心に組織再編を余儀なくされる。5月に晴れて決済業務ライセンスを取得できたのであるが、これによりアリババとアントフィナンシャルの資本が分断されることとなった。

実は、ライセンス発給にあたり中国人民銀行が決済ビジネス分野において、外国資本が混入することに難色を示したと言われている。アリババには、ご存知のようにソフトバンク27%及びYahoo15.4%という外国資本が注入されている。アリババの子会社であるアリペイが決済業務ライセンスを取得すれば、ソフトバンクやYahooが間接的にでも中国決済分野に参入できることを当局は懸念したのではないだろうか。

いずれにせよ、この段階でジャック·マーがアリババとアリペイとの間の資本関係を再構築しアリババとアントフィナンシャルの両社の関係を表面上は分離する形で再構築したのが上記の株主構成の図なのである。

ソフトバンクやYahooなどのアリババ株主とアリペイとの合意

アリババの株主であるソフトバンクやYahooからすれば、アリババ部門の決済を担い金融部門の中核として高いポテンシャルが見込まれるアリペイが一方的に支配の及ばない外部に流出することは到底受け入れられるものではない。

それでアリババの株主を納得させるために登場したのが、アリペイ(現アントフィナンシャル)が、税引前利益の37.5%をアリババに支払うという合意だったのである。

資本関係を整理する代わりにアントフィナンシャルが上場するまで、アリババがアリペイから税引前利益の37.5%を受け取るという複雑な契約がなされることとなったのである。

具体的な踏み込んだ内容については2014年9月にアリババがニューヨーク証券取引所に上場する際に公表されたProspectus(目論見書)で明らかとなっている。詳細をご覧になりたい方は、以下のリンクから原文を参照いただきたい。26Pあたりから細かな条件が記載されている。

参考資料:アリババProspectus(目論見書)2014

アントフィナンシャルの上場に向けた準備開始!?

以上のように、アリババとアントフィナンシャルの関係は、長い間複雑な関係であったことがお分かりいただけたであろうか。こうした複雑な関係が、両者間で利益相反が生まれやすい構造を作り出し、アントフィナンシャルの上場に対してネガティブに作用していたのである。

しかし、今回アリババがアントフィナンシャルの株式を33%保有し、アントフィナンシャルは税引前利益から一定の割合を支払う義務から逃れることが出来、シンプルな関係となった。アントフィナンシャルの上場実現に向けてポジティブに働くことは間違いないであろう。

懸念材料としては、当初中国人民銀行が外国資本に対して決済業務への参入を懸念していたはずなのに、どうして今頃になってアリババがアントフィナンシャルの株式を保有することを黙認するのかという点である。

ポジティブな理由としては、中国政府も市場をオープンさせて行くという流れの中で、外国資本が金融分野により深く入り込むことを中国人民銀行も認めて行くという多くなトレンドの中の一つなのかもしれない。

ただ、今回の株式取得を詳細にみると、アントフィナンシャル株式はアリババ本体でなくアリババの子会社が取得するという構図になっているため、今後のさらなる展開にも留意しておく必要があるのかもしれない。

参考記事:アントフィナンシャルが2017年と噂されていた上場計画を再び延期か?クアラルンプール滞在中のジャック・マーが上場延期を示唆 

いずれにせよ、中国最大のユニコーンであるアントフィナンシャルが、株式上場に向けて重要な一歩を踏み出したことは間違いないだろう。GltoechTrends(グローバルテクノロジートレンド)としては、今後もアントフィナンシャルの上場に向けた動向に注目していきたい。