2017年の中国巨大IT企業(BAT3社)のベンチャー投資状況 まとめ 各論編 第1回【テンセント】

 前回記載した「中国巨大IT企業BAT3社のベンチャー投資状況」総論編をもう少し掘り下げて分析してみたい。今回はテンセントに焦点を当てる。2017年にテンセントが投資したのは113社。一企業が実行した投資とは思えない規模となっている。

2017年テンセントが投資した企業一覧 

GlotechTrends(グローバルテクノロジートレンド)としては、「中国巨大IT企業であるBAT3社のベンチャー投資状況をまとめ総論編」として概論を記載しているので、未読の方はご覧いただければ幸いである。

参考記事:2017年の中国巨大IT企業(BAT3社)のベンチャー投資状況 まとめ 総論編

今回は、各論編第1回としてテンセントに焦点を絞り、2017年に投資実行した113社のリストを作成し、投資企業名、国名、投資時期、投資金額、投資ラウンドなどの情報を整理した。真っ先に目につくのは、「億元」「億USD」というその投資単位である。日本円で考慮すれば100億円単位の投資をスタートアップ企業に多数実行し、もはやベンチャーキャピタルを超越した投資規模となっている。

実は、1月19日に発表されたテンセントに関するニュースとして、Googleと特許権の相互使用契約を締結しクロスライセンスが発表された。

日本人にとって、Googleはサービスに対する理解もあり一目おく存在であっても中国企業のテンセントを詳しく理解している人は少ないかもしれない。

今回発表されたニュースを見ると、Googleとテンセントは対等のビジネスパートナーとして、共に両者が保有する特許を使用することに合意したという内容になっている。これは、Googleがテンセントの実力を認めたということに他ならない。将来におけるGoogleの本格的な中国再進出をサポートし、共にビジネスを展開するのはテンセントと決定した瞬間なのかもしれない。今後のビジネスにどれほどのインパクトを与えることとなるのか計り知れない。

さて、以下にテンセントが2017年に投資を実行したベンチャー企業113社のリストを見ていただきたい。

2017年テンセントの投資企業一覧(データ提供元lieyunwang.com)

多くの産業にバランスよく投資を実行し、テンセントがあらゆる産業に影響力を保持していることがよくわかる投資ポートフォリオである。

 最大の投資分野は本業周辺分野であるエンタメ(28社)とゲーム(7社)

テンセントの本業はゲームや娯楽であることを忘れてはならない。2017年のベンチャー企業投資状況を見ても、その本流の流れに変化はないようである。エンタメ産業に28社、ゲーム産業に7社と合計35社への投資を実行している。

これらの投資先の中には、アニメ、映画、エンタメなどのコンテンツ制作企業が多く存在し、テンセントがこうしたコンテンツメーカーに早い段階で投資することによって、コンテンツの著作権を保有してしまうという意図がある。ヒット作品が誕生すれば、それをゲーム化しビジネスを発展させていくというのが、従来からテンセントが最も得意とする分野である。いわば、コンテンツプラットホーム的なものを作り上げ、コンテンツに関する一つのエコシステムが形成されているのである。

Flipkart OLAなどのインド勢、Go-Jekなどのインドネシア勢に対する巨額投資

テンセントが実行した投資の中で、ひときわ目につくのが海外企業に対する投資である。例えば、2017年4月に実行したインドのEコマース企業Flipkartに対しては14億USD(1540億円規模)を投資、同じく10月に実行したインドの配車アプリサービスのOLAに対しては20億USD(2200億円規模)と投資額としては、かなりの巨額投資となっている。

また、インドネシア企業の中でとりわけ注目を集めるベンチャー企業であるGo-Jekに対しても2017年5月に12億USD(1320億円規模)さらに8月に追加で数億ドルUSDの投資を実行している。

インドとインドネシアには、他にも数10億円規模の投資を複数実行しており、テンセントがインドとインドネシアを最重要投資拠点としていることがうかがえる。

その他、アメリカ企業に対しては数多くの投資を行っており、合わせてカナダ、オーストラリア、イギリス、ドイツ、タイ企業などにも投資を行っている。リストを確認する限り2017年においてテンセントから投資を受けた日本スタートアップ企業はなかったようである。

日本は、経営が行き詰った企業に対して中国資本が投資を実行し買収してしまうケースが散見されるが、スタートアップの段階から中国資本を導入するケースはまだ少ないのかもしれない。今年はテンセントを提携を本格化する日本の有力スタートアップが誕生しても面白いかもしれない。

テンセントの錬金術、テンセントが作り出すスタートアップサポート型のエコシステム

テンセントが投資するベンチャー企業の中から数多くの企業が上場を果たし、保有株の売り出しによりテンセントに莫大な利益を生み出している。

例えば、テンセントは2014年に50億人民元を盛大文学へ投資をしたが、現在では組建閲文集団として香港市場に上場を果たしており400億HKDの時価総額となっている。2013年に4.48億USD を搜狗( SOGOU Inc)へ投資を実行し、2017年11月にアメリカのNYSEに上場し20億USDの時価総額となっており、いずれも巨額の投資リターンを上げている。これらはほんの一例であり、毎年テンセントの投資企業が株式上場を果たしている。

2017年度の投資を見ても、リストのエンターテーメント欄にある阅文集团(China Literature Ltd)という会社が、2017年の11月に香港市場に上場しており2017年1月に投資を行った1億USD(110億円)が数ヶ月で数倍になっている。

テンセントは相乗効果が見込めそうな有望なベンチャー企業に対して、投資を実行し、自らが投資企業をサポートすることによって、売上や利益を押し上げ企業価値を高めた上で、数年後に株式上場を実現するというエコシステムを作り上げている。テンセントが急成長を未だに実現している秘密はここにあるようだ。

【参考記事】:テンセント株価が急騰中、アリババを抜き世界第6位の時価総額へ、テンセントのWeChatをベースとした錬金術ビジネスモデルが成長を加速させる

GlotechTrends(グローバルテクノロジートレンド)では、次回はアリババのスタートアップ投資をまとめる予定である。