【キャッシュレス社会の衝撃】 第2回 わかる!アリペイの 仕組み! アリペイ(支付宝)/中国

中国ではキャッシュレス社会の実現が急速に進んでいる。キャッシュレスでの支払いを実現させるルールがアリババが運営するアリペイと、テンセントが運営するウィーチャットペイである。アリペイのユーザー数は、中国国内に4億5千万人。その競合でほぼ同様の仕組みのウィーチャットペイのユーザー数は、4億人超。(2016年末現在)

中国人が絶賛しているアリペイだが、どうも日本人にはアリペイのフルラインサービスはわかりづらい。というのも、実はアリペイは外国人にはフルラインサービスを提供していないからである。外国人がアリペイを開設する場合、パスポート、中国でアクティブな電話番号、中国居住を許可する長期のビザ、 居住許可証、中国国内の2つの銀行口座、すでにアリペイを申し込む時点で1年にわたる中国滞在事実を証明する書類などを提示して、ようやくアリペイ口座を開設できる。だが、このような面倒な書類を用意しアリペイを開設できたとしても、決済と送金といった一部の機能しか使用できない。以下では、アリペイの発展の歴史を簡単に振り返りつつ、現在のアリペイが行う中国人向けのフルサービス機能を説明していきたい。

 

  • アリペイは、タオバオでのEコマース取引の安全性を担保するツールとして生まれた。

アリペイが誕生した2004は、まさに中国ではインターネット取引の黎明期。アリペイの親会社であるアリババが中国でEコマースを開始したのだが、その頃は、インターネットでものを購入すると偽物をつかまされたり、トラブルに巻き込まれるといった理由からユーザーはEコマースに及び腰であった。そこでアリババがネット取引の信頼関係を担保するために考え出されたデジタル決済がアリペイである。アリババの子会社であるAnt Financialにより運営されている。

商品を購入したユーザーは、料金をEコマース業社に直接支払うのではなく、決済会社のAnt Financialに代金を支払い一旦プールさせる。ユーザー代金支払い報告をAnt Financialから受けたEコマース業者は、その報告をもって商品をユーザーに発送する。ユーザーは届けられた商品を確認して、問題がなければ、Ant Financialにプールされた代金は、Eコマース業者のもとに支払われる。万が一、問題があれば、Ant Financialが、Eコマース業者に対するトラブル対応の仲介を行い、リファンドを行うなど取引の安全性を担保してくれる。アリペイによるEコマース取引の安全性担保によりタオバオのEコマースは爆発的に普及したのである。

  • その後、アリペイがEコマース決済ツールを超えて独自の進歩を遂げていく

その後、アリペイはEコマースの分野だけではなく、リアルの決済分野に展開し成功をおさめていく。現在は、電気、ガスなどの公共料金。レストランの支払い、リアル店舗での買い物、タクシーなどありとあらゆる場所で使用可能となっている。また、最近では、日本でも中国人向けの決済手段として各地の空港をはじめとして、アリペイ決済が可能な店舗が増えている。この動きは、世界的で起こっており、中国人観光客向けの決済手段として各国で導入展開が拡大している。

また、銀行とアリペイ口座間での双方向の資金送金も簡単であるし、銀行を介在しない知人間送金なども、相手の電話番号かIDさえわかれば瞬時に送金可能である。

  • 毎日銀行よりも高い利子がつく余額宝(Yu’EBAO)

アリペイ口座の中にプールされたお金にはちゃんと毎日利子がつく(余額宝/Yu’EBAO)。しかも、銀行と比較しても有利な利率だ。最近では、全ての預金を銀行でなくアリペイでまとめて運用している人も少なくない。例えば、今日(2017年7月14日)の中国銀行の金利はいつでも引き出せる普通預金の金利は0.35%、1年定期で3.25%であるが、アリババの余額宝金利はいつでも引き出せる流動預金でさえ4.106%といった具合だ。よって、現在(2017年6月末時点)のAnt Financialの余額宝残高は、18兆2200億円にのぼり中国大手一角の招商銀行の預かり残高の15兆円程度を上回る水準となっているのである。アリペイを運営するAnt Financeは単なる決済会社を超え、もはや中国での巨大な金融機関の地位を確立し,来年度中の香港証券市場への上場も噂されている。

 

  • アリペイによる信用サービス、芝麻信用(Zhi Ma Xinyong) 

アリペイは、中国人が 口座開設するには、政府が発行するIDカードの提示が求められる。中国版マイナンバーのようなものだ。これにより、アリペイと本人確認は忠実に行われる。アリペイは、アリペイに紐づく個人情報と全ての取引履歴を保有することになる。まさに超ビッグデータである。現在それを用いて、アリペイは芝麻信用(Zhi Ma Xinyong) というサービスを新しく展開している。過去にアリペイで支払われた取引履歴や、口座内の資産残高を分析することによって、そのユーザーの信用を数値化して数値でユーザーに提示しているのだ。

例えば、ユーザーが新しく部屋をかりたいと思った時。大家さんに、この芝麻信用スコアをスマホで暗号化して送信する。私はアリペイでこれだけの高いスコアを持っていますのでテナントとして安心できますよ、というものである。通常芝麻信用スコアが700点を越えるとそれなりの信用があるものとして判断される。また、芝麻信用スコアを使って、ユーザーが住宅を購入する際にの住宅ローンを引っ張ることも可能である。信用スコアである、与信を測る情報としても使われているのだ。このスコアはアリペイを使えば使うほどハイスコアになるように設計されているので、公共料金の支払いやネット取引の拡大、預入残高の拡大などにも寄与している。このスコアは、おそらく防犯効果にも力を発揮しているものと推測される。例えば、上海で開業した無人コンビニ、万引きなどの不正行為が少ないと報告されているのは、ユーザーがアリペイアカウントで入店したあとに、不正行為をすれば、自分のスコア低下が懸念される。抜群の防犯効果を発揮していると思われる。

また、一部の国ではアリペイの芝麻信用スコアを、中国人が海外へ行くときに必要な、Visa取得のための提出書類として認めているところもある。例えばシンガポールは、銀行のペーパーの残高証明の代わりとしてこのスコアの提示を認めている。

当初はEコマースの取引の安全性を担保するものとして生まれたアリペイだが、その爆発的な発展プロセスを得て、現段階では社会インフラの一翼を担うまでになってきているのがおわかりいただけるだろう。ちなみに、外国人のアリペイユーザーに、現在は上記の3、4の機能は付与されていない。

上記でアリペイの全てを説明できたわけではないが、社会インフラとしてなくてはならない存在になっている姿を理解いただけたるだろうか。今後もGlotechTrendsでは、継続的に皆様に記事をお届けしていく予定である。